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「名もなき家事」の名付け親に会ってみた!
大和ハウス工業株式会社 多田綾子さんインタビュー

  「名もなき家事」とは、掃除や洗濯、料理といった「名前のある家事」以外の、細々とした家事のこと。「脱ぎっぱなしの服をクローゼットにしまう」「丸まった靴下をひっくり返す」など、家族の分まで一人で抱え、ストレスを感じている人も多いのではないでしょうか。
  「名もなき家事」の名付け親である大和ハウス工業株式会社の多田綾子さんに、お話を伺いました。

「名もなき家事」はこうして生まれた!

 多田綾子さん写真

 トイレットペーパーや冷蔵庫の麦茶などをわずかに残しておいて、「次の人に入替作業を委ねてしまおう」といった経験、みなさんにもありませんか? 思い返すと、私も子供のころにやっていました(笑)

 家の中で、気がついた「誰か」がやっている作業。あるいは、「誰かがやってくれるだろう」とそのままにされている作業。これらの名前のない細かな作業は漏れてしまいがちです。当社で取り組む「家事シェアハウス(※)」について話し合いを重ねるなかで、実はこうした名前のつかない家事こそが大きな負担になっていると気づきました。わかりやすい名前をつけて「見える化」し、この問題をみんなで共有しようということで、「名もなき家事」という言葉が生まれました。

(※)家事シェアハウス(ダイワハウス) 

「名もなき家事」が心の負担に

 当社では、2017年に全国の共働き世帯600名に家事に関する意識調査を行いました。家事参加について、夫は「夫3割:妻7割」、妻は「夫1割:妻9割」と認識していて、夫と妻の間に大きなギャップがあり、「名もなき家事」についても9割を妻が負担していることがわかりました。
 共働きが急増する中、夫婦で家事を分担しているご家庭が増えていますが、分担を決める際に、名前のつかない細かな作業が漏れてしまい、多くのご家庭では気が付いた妻に負担が偏ってしまいがちです。家事を負担に感じている方のほとんどが、「やってもやっても終わらない、家族の誰にも感謝されない」と心の負担も感じています。

これで上手くいく!家事シェア4つのポイント

 家事については、夫と妻でそれぞれ言い分があると思いますが、お互いの歩み寄りが大切です。「名もなき家事」のモヤモヤを解消して、上手に家事をシェアするためのポイントを紹介します。

妻の言い分、夫の言い分イラスト

① お願いするときは具体的に
 「洗濯物を干すときはシワを伸ばして」「ゴミ出しをしたら、新しいゴミ袋をセットして」などとわかりやすく伝えます。そうすると家事の漏れも少なくなり、「何をしても中途半端でやり直すためかえって仕事が増える」といった妻側の不満も、「せっかく家事をやっても感謝されるどころかダメ出しされる」という夫側の言い分も解消されるのではないでしょうか。

② 小さなことでも褒める
 「テーブル拭いてくれて、ありがとう」「洗濯物、頼んだ通りに畳んでくれて助かる」など、どんどん口に出して褒めましょう。褒められるとやる気になってくれる方が多いですよね。

③ 情報を共有する
 家族のSNSグループで「洗濯機回しておいたよ」とか「洗剤がなくなりそう」といった小さなことを共有したり、リビングや廊下に掲示板を置いたりするのもよいと思います。特に、掲示板は一目でわかり、手書きの文字からはお互いへの配慮や感謝の気持ちが伝わるのがいいですね。

④ 感謝の気持ちを言葉で伝える
 今更照れくさくて「ありがとう」なんて言えない、言わなくても伝わるだろう・・・と思いがちです。ですが、「ありがとう」と言葉にして伝えると、お互いが気持ちよくなるだけでなく、それを聞いた他の家族も、誰かがやってくれたことに気がつき、今度は自分がやってみようと考えるようになります。家庭内で感謝の言葉が増えると、家族のよい関係性にもつながっていくと思います。

「名もなき家事発生!」声に出して楽しく

 これは我が家の例ですが、ティッシュが切れて新しいティッシュをセットする作業が発生したとき、気づいた人が「あっ!名もなき家事発生~」と、冗談っぽく家族のみんなに聞こえるように声に出しています。黙ってやってしまうと誰にも気づかれず感謝もされないですが、声に出すことでみんなが共有できるし、何となく楽しくなります。
 また、家電の進化によって「フィルターの清掃・交換」など、新たな「名もなき家事」が生まれています。
 我が家では、最新型のドラム式洗濯機とロボット掃除機を購入する際、夫に選んでもらい、「私は操作方法がわからないからお願いね」と家電回りのお手入れを含む洗濯と掃除を夫に一任しました。以来、洗濯機のフィルター掃除なども夫が率先してやってくれています!

多田綾子さん写真

「家事シェアハウス」が目指すもの

 当社では、全国的にも共働き世帯が多い地域の富山支店で「共働きをしながら、夫は家事に協力的なのになぜ一向に家事負担が減らないのだろう」という想いから女性中心のプロジェクトが発足し、「家事シェアハウス」が誕生しました。「自分のことは自分でする」を習慣化できるよう、間取りに工夫を散りばめ、夫が帰宅して玄関からリビングに到着するまでに発生しがちな「脱ぎっぱなしの靴や靴下の片づけ」などの「名もなき家事」が自然に解消できる「家事シェア動線」を作り、一人ひとりの荷物を個別で管理できる「自分専用カタヅケロッカー」などを設置しています。住まいにひと工夫することで、家族みんなが自然と家事に取り組めるようになります。

カタヅケロッカーの写真とイラスト

 

子供たちに人気の「名もなき家事妖怪」

 子供たちに楽しく知って学んでもらいたいと生まれたのが「名もなき家事妖怪」。「これも家事なんだ」「この妖怪を退治しよう」といった気づきやコミュニケーションが生まれることを目的にしています。

名もなき家事妖怪イラスト

 「家事シェアハウス」のモデル棟にティッシュの空箱など、いろんな「名もなき家事妖怪」を忍ばせて、「いくつ見つけられるかな?」など、遊び間隔で家事に参加できるイベントも行っています。
今の子供たちが家族を持つ年代になった頃には、家事に向き合う環境が当たり前となり、「名もなき家事、そんな言葉あったね」と世の中ゴト化しているといいなと思います。

「名もなき家事」への想いをみんなで共有しよう!

 「名もなき家事」と名前をつけたのは、名もなき家事を含めた家事を自分ゴト化、家族ゴト化してほしいという想いからです。以前当社のイベントに参加した女性から「私たちを苦しめていたのは『名もなき家事』だった。よくぞ名前をつけてくれました」と言われたことがありました。名前をつけたことで、これまでみんなが感じてきたモヤモヤした想いを共通の言語としてみんなが共有できるようになってきたのです。
 東京都で「名もなき家事」の普及啓発に取り組むと伺い、更に多くの方に社会課題として認識していただけるのではと期待しています。「名もなき家事」のキャッチフレーズ募集についても、どんなものが集まるのか、とても楽しみです。「名もなき家事」の日頃の不満や感謝の気持ちなど、ぜひ多くのみなさんの声を聞かせてください。

 

多田さんが審査員として参加! 東京都では「名もなき家事」にまつわる、みなさんの声・アイデアを募集しました

  

 

多田綾子さん

大和ハウス工業株式会社 住宅事業本部マーケティング室上席主任
設計現場を経て2005年より収納の企画から開発・販売まで全般を担当。その時に培ったノウハウを活かし、現在は「名もなき家事」の提唱者として富山支店発祥の「家事シェアハウス」を担当し、全国展開する。一級建築士、インテリアコーディネーター。