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【インタビュー】筒井淳也さん
パートナーの負担を減らすため、夫婦のマインドチェンジを進めよう

 日本及び東京の男女の家事・育児時間を見ると、男性が家事・育児をする時間が短い一方、女性の家事・育児時間にかける時間は非常に長くなっています。
1日24時間を男女ともに自らの希望に応じて等しく使えるようになるためには、当事者夫婦だけでなく社会全体でマインドを変え男女の家事・育児時間差を縮めていくことが必要です。

 この記事では、夫婦のマインドチェンジに焦点を当て、立命館大学産業社会学部教授で日本の家族社会学を研究している、筒井淳也さんに、これまで家事・育児に参画する機会の少なかった男性が家事や育児に段階的に取り組んでいくために必要な夫婦の心構えやコミュニケーションの重要性についてお話を伺いました。

家事に苦手意識を持つ男性のマインドチェンジ ― 家事を仕事に置き換えてみる

 コロナ禍において、男性の在宅時間が増えたことで、男性が家事や育児に携わるチャンス自体は増えていると考えられます。
しかし、これに伴った家事・育児参画時間は思ったよりも増加しておらず、女性の家事・育児の負担が減っているとは言えない状況です。

 これまでに家事を担ってこなかった男性は、いざ家事に取り組める時間が生まれても、なにから始めれば良いのかがわからないことが多いようです。
こんな時、家事を仕事に置き換えて考えてみることで、男性の家事に対するマインドチェンジのヒントになると思います。

 社会人1年目、仕事のやり方がわからないから、やらなくていいとはならないですよね。おそらく入社して最初の段階では、上司の指示を仰ぎながら仕事を始め、徐々にできることを増やしていったことと思います。

 これを家事に置き換えると、これまで家庭の負担を担ってきたパートナーは、さしずめ上司に当たります。
「家事の中で新人の自分にできることは何があるか?」というコミュニケーションから始めることが第一歩になるでしょう。

妻のマインドチェンジ ― 夫の成長のためには我慢も必要

 家事を仕事に置き換えるという意味では上司=妻のマインドチェンジも重要です。
最初から仕事の全体像を見渡し完璧にこなせる新人はいません。
上司は新人の成長を我慢強く見守り、やがて一人でも適切な判断ができ、仕事をこなせるように成長させる義務があります。

 家事についても最初から全てをこなせる人はいません。
自分がやった方が効率的だと思うこともあるとは思いますが、夫の家事レベルを引き上げ、一人でも家事をオペレーションできるようになってもらい、同じレベルで家事・育児を分担できる夫婦になるため、時には辛抱強く成長を見守る事も必要です。

目的はパートナーの負担を減らすこと

 これから家事に参画しようと考える男性に注意しておきたいのは最初のうちは自分だけで判断しないという事です。

 仕事の全体像を把握していない新人が、勝手に判断や行動した結果、むしろ周囲に迷惑をかけてしまうケースは良くあります。
ここも家事に置き換えてみましょう。

 家事も仕事同様、全体を見据え計画的に行うことが求められます。 例えば料理。家族の予定を把握し、1週間の献立を考え、それに伴った食材を購入し、食材の消費期限等を考えながら買い物、調理を行う。
妻がこうした計画を立てていたとします。
このような妻の計画を知らずに、夫が冷蔵庫の中に何があるのかを知らずに食材を買い足したり、冷蔵庫の食材を考え無しに使って料理を作ると、どうなるか。食材を無駄に余らせたり、食材を買い直す必要が生じ妻の負担が増えることが考えられます。

 夫としては良かれと思ってした行動がかえって妻の負担を増やしてしまうことがある。
日頃、家事を分担してこなかった男性はこのことを理解してください。

 そして、このような状況を避けるために家庭内で必要とされる家事の中で、今の自分にできることを「話し合う」ことを心がけてみてください。
夫婦でコミュニケーションを取ったうえで、その時点の夫にできることを行えば確実に妻の負担を減らすことに繋がるはずです。

 仕事でも目標を明確にすることで、個々のやるべきことが見えてきます。
これまで家事を分担してこなかった男性は家事参画の最初の目標を「パートナーの負担を減らすこと」と設定してみてはどうでしょうか。

コミュニケーションを習慣化する、価値観の違いを理解する

 新婚夫婦やこれから結婚する人、将来的に結婚して家庭を持ちたいと考えている人は、「膝を交えて話す、向き合う」ということを結婚初期、できれば結婚する前の準備期間から習慣化させられると良いでしょう。

 結婚前、結婚初期、妊娠期間、子供の幼少期などフェーズが変わることで家事の量は変化します。

 夫婦のコミュニケーションが習慣化していれば家庭におけるフェーズが変化した際も、その時点での夫婦の働き方や家事スキルに応じて最適な分担ができるようになります。

 特に子供が生まれてからは家事に加えて、育児の負担が加わってきます。男性は遅くとも、妻が妊娠している10ヵ月間にワンオペで家事がこなせる「管理職兼プレーヤー」となることを目指しましょう。 その後の育児期間が夫婦双方にとって楽になるでしょう。

 もう一つ、パートナー同士の家事に対する価値観を結婚前に確認することは非常に大切です。 例えば「綺麗さに対する価値観」が異なる夫婦では、「掃除」に求める内容も異なってきます。 価値観はどちらが正しいというものではありませんが、お互いが相手の価値観を理解せず自分の価値観のみに基づく主張をしては、夫婦のコミュニケーションは上手くいきません。

 職場と家庭での大きな違いは、家庭では、もめ事が起きても間を取り持ってくれる人がいない点です。夫婦でもめ事の解決を図るためには、自分と基準の異なる相手の価値観を理解し、お互いを尊重し合うことが重要です。

 そのために、準備期間にコミュニケーションをしっかりとり、価値観のすり合わせが必要だと感じています。価値観の違いを予め理解し、お互いが許容できる関係性をつくれると良いでしょう。

完璧を求めず無理のない家事・育児分担を目指そう

 最後に、日本の女性の家事のレベルはホテル並に質が高いと感じます。
また、子育てに関しても非常に丁寧に行われています。
ただ、現在は夫婦の共働きは一般的で、お互いに家事・育児に費やすことができる時間が限られています。

 食事であれば最近は、冷凍食品も充実しています。
また、家事代行の活用という選択肢もあります。
家事に完璧を求めずお互いの力が抜けた無理をしない家庭環境作りを大事にしてください。
男性の家事・育児参画が当たり前となり、今の時代に合った夫婦の家事・育児分担が実現することを願っています。