IT企業のコーソルは、男性の育児休業取得を推進してきた結果、2019年に厚生労働省主催の「イクメン企業アワード2019」でグランプリを受賞し、2021年には男性育児休業取得率100%を達成しています。
育児休業取得推進にどのように取り組んできたのか、社員が働きやすい環境づくりを実現するための課題や解決法、今後の取組について、コーソル代表取締役の金山俊明さんと管理部部長の松浪曉子さんに伺いました。
男性社員の育児休業取得日数は平均58日!
当社で初めて男性が育児休業を取得したのは、2014年でした。その後2015年に当時の課長から「育児休業を取りたい」と打診され、「チーム内で業務が回るならぜひ取得してください」というところから、男性の育休取得が広がっていきました。役職者の育休取得が、他の従業員の取得へのハードルを下げたこともあり、その後は少しずつ男性社員から育休に関する相談も増え、2021年には男性の育児休業取得率100%を達成し、男性社員の育児休業取得の平均日数は58日(2014年~2021年)になりました。
育児休業取得推進のカギはメンバーの「納得感」とチームワーク
育児休業取得を推進するにあたって課題となるのが、育児休業中の人員の補填です。残ったメンバーがフォローすることになりますが、フォローしてくれた社員の貢献を人事評価に反映するなど「納得感」を得られるよう工夫を図っています。
さらに、仕事は独りではなくチームでするもので、問題解決にはチームワークが不可欠です。当社では、社員の行動指針の一つに「協力し合うこと」を掲げ、助け合える風土の醸成を常に意識しています。育休をとりたいという話があれば、業務繁忙期であっても、希望を叶えてあげようと周囲が動いてくれていますし、チームメンバーだけではカバーできない場合は、その上の部長がそのチームに入るなどして対応しており、社員にも浸透してきていると感じています。
また、仕事が「属人化」しないようにすることも大事です。誰かが抜けたら仕事が回らないということが無いように、一人一人がスキルアップを心がけ、情報共有をしながらチームで運営し、組織を強めることが大切だと思います。
情報共有で不安を払拭、時短勤務で減少する給与の50%を補填
他にも、育児休業を取得した男性社員に体験談を語ってもらうセミナーの開催や、育児休業中のメールやチャットでの情報共有、長期の育児休業前後の上司や管理部門との面談など、復帰後の昇進や給与などの不安を払拭して、仕事と育児の両立をイメージできるような機会を設けています。
制度面では、最長で子供が小学校を卒業するまで勤務時間が短縮できる「育児短時間勤務制度」が利用可能です。2018年から本格導入している在宅勤務制度と合わせて、より仕事と育児の両立がしやすくなると、社員から高評価を受けています。
さらに、ごく少数ではありますが育児休業から復職した社員が、短時間勤務で給与が大幅に減少したことを理由に退職してしまったことをきっかけに、「育児支援手当」を導入しました。育休取得後に戻ってきてくれた社員が力を発揮してくれているのに、給料が大幅に少なくなるのはおかしいということで、育児による時短勤務で減額となった時間分の賃金の50%を補填する制度です。
就業時間が短くても経験のある社員は必ず成果を出してくれますし、社員のモチベーションを高め、ひいては会社の発展にもつながっています。
育児休業取得推進は、企業にも多くのメリット
当社は、BtoBビジネスの中小企業なので、もともとは、学生の間での知名度はそれほど高くありませんでした。それが、「イクメン企業アワード」受賞をきっかけに様々なメディアに取り上げてもらったことで、働きやすい会社として興味を持って下さる学生さんも増えて、新卒の採用強化につながっています。「育児休業が取得できる会社だから」という点が入社の動機の一つになったという社員もいました。
また、育児休業取得を推進することは、コスト面でもメリットになります。育児と仕事が両立しにくいことを理由に退職されては、当社にとって大きな損失です。エンジニアを一から採用して育てるには莫大なコストがかかります。育休取得後に復職して長く活躍してくれれば、利益面でも会社に貢献してくれます。
直接対話で全社員のニーズをキャッチし、要望に応え続ける
当社では、全社員が社長と年一回、人事担当者と年一回、それぞれ一対一で面談を実施しています。直接社員の声を聞くことで、社員のニーズをくみ上げ、制度や運用方法の見直しを行っています。こうした直接対話は、職場環境の改善や、離職率の低下にも役立っていると思います。社長に自由に意見が言える風通しの良さは、中小企業ならではの強みです。
育児・介護休業法の改正に伴い、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備が義務となり、取得を働きかける仕組の更なる整備も必要です。また、これからは、介護が必要な家族を持つ社員も増えていくでしょう。育児に限らず、介護や長期休暇等で社員が抜ける際にも業務が円滑に進むよう、積極的に体制や制度を見直していくことが重要だと考えています。
今後、当社の規模が大きくなっていっても、社員の声が届く風通しが良い社風を大切に、会社や社員の利益につながる取組への要望には、応え続けていきたいです。