目次
子育てマンガ「眠いパパと寝かし付け絵本」
プロフィール
エイイチ
東京のデザイン会社に勤めた後、フリーランスのイラストレーターに。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭インターナショナル・ショートフィルム・ショウケース部門優秀アニメ賞を受賞するなど、アニメ、漫画、イラストの制作で頑張るパパ。
絵本の読み聞かせで子供を楽しませるコツ
子供に絵本を読んであげたい。
でも、どんな絵本を選べばいいのかわからない。
どう読めばいいのかもわからない。
そんな悩みを持つパパに、
絵本の専門家がアドバイスを送りました。
スペシャリストからのアドバイス(1)
絵本選びのコツ
自分の好きな絵本を選べばOK!
最初のテーマはどんな絵本を選ぶといいか。絵本通販サイト「絵本ナビ」取締役で、定番から新作まで幅広いジャンルの絵本に詳しい奥平亨さんに伺いました。奥平さんはボランティアで絵本の読み聞かせイベントも多数開催しています。
選び方 その1パパが選ぶ、ママが選ぶ、二人で選ぶ
まず大切なのはパパとママがそれぞれに選ぶ、または二人で話し合って選ぶことです。パパとママのどちらかだけが選んでいると、どうしても内容が偏ってきます。パパとママだけでなく、おじいちゃん、おばあちゃんが選んでもいい。多くの人が絵本選びに関わることで、内容の幅が広がり、子供にとっては世界が広がることにつながります。
選び方 その2パパやママ自身が好きな絵本を選ぶ
子供の興味や好みに寄り添うことも大切ですが、パパやママ自身がその絵本を好きであることも大切。読み手が面白いと思って読めば、その楽しさが聞き手である子供にも伝わるものです。ですから、何を選んでいいか迷ったなら、自分の好きな絵本を選ぶようにする。自分が子供のころに好きだった絵本でもいい。今、犬が好きなら、犬が登場する絵本でもいい。子供のころ乗り物が好きだったなら、乗り物の絵本もいいでしょう。
乗り物好きだったならこんな作品
『しゅっぱつしんこう!』
作/山本忠敬 福音館書店
乗り物を精微に描いてきた山本忠敬さんの絵本です。細かい部分へのこだわりが大人にも子供にも受けている作品。また特急から急行、普通電車へと乗り継ぐ過程で風景が都会から田舎に変わっていく様子が、大人の郷愁を誘います。
選び方 その3声を生かせる絵本を選ぶ
次のポイントは声です。読み聞かせは、読む人の声次第で伝わり方も違ってきます。パパの低めの声、ママの高めの声で読んだほうが盛り上がるという作品、場面はあるものです。例えばパパにぜひ読んでほしいのが下の作品。
低い声だと盛り上がるこんな作品
『三びきのやぎのがらがらどん』
絵/マーシャ・ブラウン 訳/せたていじ 福音館書店
この絵本には、怪物トロルの凄みをきかせたセリフや、強そうなおおきなやぎのセリフなど、低い声が効果を上げる場面がいくつもあります。「がたん、ごとん」などの擬音語も低い声だと迫力が出ます。聞いている子供はもちろん、読んでいるパパも楽しめる作品です。
選び方 その4言葉の面白さやリズムを楽しむ
子供に読み聞かせるなら何か教訓のあるものをと考えるかもしれませんが、楽しいだけ、気持ちいいだけの絵本もぜひ読んであげてください。メッセージは何かと考えるのではなく、言葉の面白さや音のリズムを単純に味わう絵本は子供たちにも人気です。聞いていて楽しい、気持ちがいい。読んでいて楽しい、気持ちがいい。こういう心地よさも読み聞かせには大切です。
言葉のリズムを楽しむのならこんな作品
『これはのみのぴこ』
作/谷川俊太郎 絵/和田誠 サンリード
リズム感よく読みたい絵本です。谷川俊太郎さんらしいユーモアと和田誠さんのしゃれたイラストレーションがうまくかみ合っています。このコンビによる絵本は何冊も出ていますので、気に入ったなら他の作品も手にしてみてください。
ここで紹介した絵本は都立多摩図書館作成の冊子から選んでいます。他にもたくさんの絵本や読み物が紹介されていますので、都立図書館ホームページをご覧になってみてください。
https://www.library.metro.tokyo.jp/junior/
スペシャリストからのアドバイス(2)
読み方のコツ
絵本よりも子供の表情を見ましょう
絵本を読み終えたら、子供から「もう一回!」の声。これは最高にうれしい瞬間です。では、どう読むと、子供が喜ぶのでしょう。絵本の読み聞かせ&コンサートのイベントを全国で開いている大友剛さんに質問しました。
子供たちに読み聞かせをする大友さん
読み方 その1子供の様子をよく見る
最初に、パパやママ自身に読み聞かせをすることを楽しんでほしいと思います。読み聞かせは絵本を通じて行う自己表現だと言ってもいいくらいです。だから大切なのは、あなたがどう読みたいか。決して上手に読む必要はありません。まずは読み聞かせをする時間を大切にしてください。絵本を読んでもらった時間は子供にとって宝物になると思います。
私が心がけているのは、読み聞かせをするときに子供の表情をよく観察することです。例えば、落ち着かない様子で絵本に向き合うのに時間がかかりそうなときは、ゆっくり待ってあげます。子供が何を感じているのか、何を楽しんでいるのかを表情から読み取り、子供に寄り添って、速度を変えるなど読み方を変えます。こうすることで同じ絵本でも毎日違うライブ感を楽しむことができるのです。絵本を読むというと、どうしても絵本ばかりに目を向けがちになります。読み聞かせは絵本を通じた子供とのコミュニケーションです。子供の様子に目を向けることも忘れないでほしいと思います。
読み方 その2演出は控えめに
私も登場するキャラクターや場面に応じて演出を楽しみますが、やり過ぎるとかえってうまくいかないと感じることが多いので、一歩引いた感じの表現になることが多いかなと思います。ちょっとだけ声を落としてみたり、息遣いを工夫するといった「ちょこっとだけ演出」です。また、「ここぞ!」というところで私はあえて小さな声でささやくようにします。注目を集めようと大きな声を出すことは、むしろ逆効果だと思っています。
読み方 その3子供の関心に付き合う
子供が何に関心を抱いているかを大切にしてあげたいとも考えています。私も息子がいるので、家で読むことがありますが、そのときは、存分に息子が注目していることに付き合います。子供は脱線の天才です。大人とは違って細部まで見ている子供は、絵本の中の何かに反応して、その日、自分を興奮させた出来事を思い出したりすることもあります。
例えば絵の隅っこに描かれた石ころの色が、その日、初めて見たカマキリの色に似ているとか、ぽろっと言ったりするのです。そんなとき、私は読み聞かせを中断して、彼とカマキリの出逢いがどんなにセンセーショナルでドラマチックだったかという話にじっくりと付き合います。その対話も楽しいですし、次の読み聞かせの絵本選びに生かせます。絵本の読み聞かせは子どもとのコミュニケーションです。絵本を最後まで読み切ることが目的ではないと思っています。
また小さな子供を連れていくなら、授乳やおむつ替えができるスペース「赤ちゃん・ふらっと」を備えた図書館もあります。子育て応援サイト「とうきょう子育てスイッチ」から探せますので、検索してみてください。
https://kosodateswitch.jp/flat/
スペシャリストからのアドバイス(3)
お話づくりのコツ
おてて絵本で会話をしよう
広げた両手を絵本だと思って、頭に浮かんだストーリーを話す。それが「おてて絵本」。子供のオリジナルのお話をきっかけに会話を広げていくのは楽しいものです。ただ、お話づくりは大人にとっても難しいもの。そこで「おてて絵本」の普及に力を入れている絵本作家のサトシンさんにコツを伺いました。
子供と会話をしながら「おてて絵本」をリードするサトシンさん
お話の作り方 その1子供が答えやすい質問をして、きっかけにする
「何かお話をして」と子供に言われて、困ったことはありませんか。お話づくりは大人でも難しい。子供にとってもそうです。ですから、最初にお話をつくるきっかけがあるといいですね。例えば「好きな動物は何?」「朝ご飯は何を食べた?」など、子供が答えやすい質問をするのです。その答えがお話のスタートです。
子供が語り始めてからも質問を挟みます。「それから? その次は?」「で、どうなったの?」と尋ねる。子供は答えようとして考えます。それでも次の話が浮かばないときは、「それから誰が来た?」とか「その動物はおなかが減っていたかもしれないよね」と語りかけ、次の展開を促します。
ただ、質問ばかりではなく、子供を褒める言葉を挟むこともお忘れなく。「すごいことを思いついたね!」「それはびっくりだ!」と合いの手を入れると、子供は積極的に話すようになります。
お話の作り方 その2絵本の続きや別の展開を一緒に考える
質問をしてもお話が浮かばない場合には、絵本を読んだ後にその続きを一緒に考えてみるとか、別のストーリーを考えてみるといった方法もあります。例えば「ももたろう」を読んだ後に、「ももたろうの家来にもう一匹、他の動物がいたらどうなっただろう」と問いかけてみましょう。子供が何か動物を挙げたら、「その動物はどんなことが得意かな」などと質問をして、話を展開させます。
お話の作り方 その3お話のキャッチボールをする
「おてて絵本」の楽しみ方としては、「キャッチボール読み」もお勧めです。キャッチボールをするように親子が交互にお話をつくっていきます。ストーリーが思わぬ方向に展開したりして楽しめます。さらにこれを発展させると、大勢が参加してお話をつくっていく「リレー読み」になります。バトンを渡すようにお話を順番につくっていきます。おじいちゃん、おばあちゃん、子供の友達にも参加してもらって、みんなで楽しみましょう。
お話の作り方 その4いい話、楽しい話は求めないでいい
「おてて絵本」で気をつけてほしいのは、「いい話」ばかりを求めないことです。大人は「自由に話して」と言いながら、基準を設けがち。自由に話すのだから、順序立っていなくてもいいし、アニメや絵本を真似た話でもいいのです。大切なのは、子供自身が楽しみながら話すこと。パパとママはそれをそのまま受け止めましょう。
絵本選びに迷ったら自分の好きな絵本を選べばいい。凝った演出で読む必要はない。「おてて絵本」は子供のお話をただ受け止めればいい。スペシャリストからのアドバイスはどれも難しいものではありませんでした。気軽に絵本を手に取り、子供との読み聞かせの時間を楽しんでください。