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育業したらモヤモヤの原因に気づいた!
人気コピーライター梅田悟司さんが「名もなき家事」に名前をつけたワケ

 「名もなき家事」とは、家の中に無限に存在する名前のついていない細かな家事のこと。

 「世界は誰かの仕事でできている。」、「バイトするなら、タウンワーク。」など、印象に残るコピーを次々と生み出し、広告業界の第一線で活躍してきたコピーライターの梅田悟司さん。著書『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)は、「名もなき家事」にモヤモヤしていた人たちから多くの共感を集めました。

 人気コピーライターの梅田さんが「名もなき家事」に注目し、名前をつけることになったきっかけなどについて聞きました。

 (※東京都は、「育休」を「仕事を休む期間」ではなく「社会の宝である子供を育む期間」と考える社会のマインドチェンジに向けて、育児休業の愛称を募集し「育業」と決定しました。この記事では、「育休」を「育業」と表記しています。)

家事をしていたら、いつの間にか1日が終わっていた

梅田悟司さん写真

 僕は広告代理店に勤めていた2016年に第1子が生まれ、4か月半育業しました。育業期間の最初の1か月は新鮮な気持ちで楽しく取り組めたのですが、だんだん気持ちが停滞してきたのです。なぜだろうと考えてみたら、「名もなき家事」が原因だと気づいたんです。

 「今日1日家にいたのに、何していたの?」
 このようにパートナーから聞かれた経験、ありませんか? そんな時に限って、あれもこれもやっていたのに、うまく説明できなくてモヤモヤしてしまうものです。
 コピーライターの本当の仕事は、“みんなが思っているけれどまだ言語化されていないこと”を言葉にすること。家事といえば、炊事・洗濯・掃除などのイメージがありますが、実はもっとたくさんある。いや、無限ですね。頭ではわかっているつもりでも、その大変さや多さを体感することで、名もなき家事は、我が家の問題でありながら、社会全体の問題だと気づいたんです。それら1つ1つに名前をつければ、「細かすぎて説明できない」「大変さが伝わらない」という「名もなき家事」に関するギャップを埋めることができるんじゃないかと思いました。

「当たり前」が、もっと評価されていい

 育業が明けて出社した時、会社で倒れ込むように寝てしまったんです。細かな家事に加え、新生児の育児は「命を預かっている」という緊張感もありました。会社は大変だけど、やりなれている仕事なので、「職場の方が落ち着く~」とすっかり気が緩んじゃったんでしょうね(笑)。
 昔、ジョージアのコピーで「世界は誰かの仕事でできている。」と書いたんですが、家庭も一緒だと思いました。“今日も電車が時間通りに動いている”みたいに、家庭でもストレスを感じることなく過ごせるのは、家の中で誰かがそのストレスを引き受けてくれているからなんですよね。帰ると当たり前のようにご飯ができていて、片づいた部屋でゆっくりできたりするって実はスゴイことなんだと気づき、妻や家事・育児を担う人たちに圧倒的な尊敬の念を抱きました。

便利になっても「名もなき家事」は生まれる

 育業の経験を元にして書いた本では、多くの人に共通する70個の「名もなき家事」に名前をつけ、マンガと合わせて紹介しています。特にお気に入りなのが、「リ・ポジショニング」「道づくり」「再配達門限」。世の中が便利になっても、そこから新たな家事が生まれていますよね。

命名「リ・ポジショニング」

水切りカゴに入っている昨夜洗った食器を、水滴の有無を確認しながら所定の位置に戻す家事

リポジショニングのイラスト
イラスト ヤマサキミノリ
命名「道づくり」

ロボット掃除機をかける前に、床に置いてある荷物をテーブルなどの上に避難させる家事

道づくりイラスト

命名「再配達門限」

自分で指定した再配達時間に急かされるように帰宅する家事

再配達門限のイラスト

快適な環境は、誰かの優しさの上に成り立っている

 最近はリモートワークも一般的になりましたが、例えば、リビングでリモート会議をしていると、家族みんなが静かにしなくちゃいけない。抜き足差し足忍び足で家事をやらなきゃいけないという配慮が生まれるので、家事の難易度が上がるんです。そこに対しても「考えてくれているんだな」と思いをはせてほしいですね。
 「会議をしている人に悟られないように夕食の準備をする家事」とか、小さなお子さんがいれば、「騒がないように子供の相手をする家事」とか。これって優しさであり、配慮じゃないですか。何も気にしなければ、ガンガン音を出して料理や掃除もできる。家事って「考える家事」「決断する家事」「気遣いの家事」など、いろいろな目に見えない要素が含まれています。静かにリモート会議ができるという快適な環境は、誰かの優しさの上に成り立っているということをわかってほしいと思うんです。

家事問題はエンタメ要素をもって伝えるのが理想

 夫婦間で家事の話をすると、不穏な空気になったりすることはありませんか? 家事の問題って根深いと感じていて、だからこそエンタメの要素が必要じゃないかと思うんです。
 以前、朝の情報番組の中で、夏場に頻発する「ちょっとだけ残った麦茶が、冷蔵庫に残っている問題」を「1センチメンタル」と名づけてみました。すると、名前を付けると「あ、また1センチメンタルか~」と思えるんですよ。それが言葉の力ですよね。面倒な家事も名前をつければ愛着がわいてくるし、気が利いている名前だったら、笑い飛ばせるかもしれませんよね。
 家事のことを話題にする時に重要なのは客観視して事実を伝えること。誰かを否定したり、反論したり、説教するのではなく、事実をエンターテインメントの要素をもって伝えるのが、家事のコミュニケーションにおける理想のスタイルなのかなと思います。「見てよ、私また『道づくり』やっているのよ」とかね。

梅田悟司さん写真

「名もなき家事」は、そのまま表現されているだけでおもしろい

 「名もなき家事」はもともと大和ハウスさんが提唱された言葉で、一定数の人には浸透してきましたが、まだまだ認知度が足りない。誰かの優しさに気づいて感謝の波が広がるという意味でも、この言葉をみんなが知っている方が絶対にいいですよね。
 東京都で「名もなき家事」を広めるためのキャッチフレーズやエピソードなどを募集していますが、奇をてらう必要はなく事実を素直に表現することが大事です。その家事を、どれだけ細かく説明できるか。細かく描写すればするほど「めっちゃわかる!」「うちもあるある」と他の人の共感を呼ぶはずです。その共感や笑いが誰かの支えになって、みんなが生きやすい社会になるといいなと思います。
 ぜひ「名もなき家事」認知度100%を目指して、みなさんのリアルな日常を言葉にしてお寄せください!

梅田さんが審査員として参加! 東京都では「名もなき家事」にまつわる、みなさんの声・アイデアを募集しました

  

 

梅田悟司さん

コピーライター、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部教授。2019年4月、「育休を4ヶ月取得して感じたこと」というX(旧Twitter)の投稿が大反響を呼び、累計PV1200万超に。著書に「やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。」(サンマーク出版)「『言葉にできる』は武器になる。」(日本経済新聞出版社)

梅田悟司さん写真

 

 

『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』梅田悟司(サンマーク出版)