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家庭でも“ラグビー流”気遣い発揮!
日本代表・垣永真之介さんに聞く 家事・育児と夫婦の絆の深め方

垣永選手の家族写真 スクラム前の“雄叫び”でチームを盛り上げるなど、ムードメーカーとして知られる垣永真之介さん。所属する東京サントリーサンゴリアスでは、「カッキー」の愛称で多くのファンに慕われています。プライベートでは2016年に結婚し、2018年1児のパパに。ラグビー選手、そして会社員としても多忙を極める中での家事・育児分担や夫婦の絆の深め方などについて伺いました。

ラグビーのポジションに例えるなら、家では“ウイング”

 ラグビーをはじめたきっかけは、ダイエットです。幼稚園の年長で40キロくらいあって、先生から「ラグビーをやったらなんでもできる」と言われて始めました。結局ダイエットは失敗しました。小6で90キロくらいになりましたから(笑) 

 僕のラグビーでのポジションは、“プロップ”と言って、80分の試合中テレビにほとんど映らず、ボールを持つ時間は10秒あるかないか。スクラム最前列で相手と組みあい、パワーと忍耐力でチームを支える縁の下の力持ちみたいなポジションです。

 家での僕は、味方がつないでくれたボールをトライにつなげる“ウイング”に近いかな。料理も洗濯もしますが、食材や洗剤は妻が用意しておいてくれて、僕は攻撃のみです。そういう意味で“ウイング”ですね。決して亭主関白ではないです(笑)

得意料理はカレーとペペロンチーノ!

 うちは共働きで妻も働いているので、家事は、家にいる方が気づいた時にやっています。特に役割分担があるわけじゃなく、基本的に平日家で家族と一緒に過ごす時間って、睡眠時間を除くと23時間くらいなので、お互いを思いやり、どうすれば寝るまでの間に子供と遊べて、効率的に自分の時間も作れるかということを考えながら動いています。

 子供が生まれるまでは全く家事をしていなくて、料理もほとんど経験ゼロ。でも、やったことがなかっただけで、実際にやってみると結構できるもんだなと楽しくなりました。それまでは、“食べる専門”で、食べる側の気持ちしかわからなかったのが、料理をやるようになって作る側の気持ちもわかるようになりました。得意料理はカレーとペペロンチーノ!まだ好き嫌いが多い年齢の子供が「おいしい!」と言って完食してくれるとすごく嬉しいです。

ラグビーは辛いことが8~9割 練習も家事も無心で取り組む

 ラグビーってハードな練習が多くて、すごく走るんです。体重115㎏のこの体で走るのは相当きついけど、どんなに辛くても無心で走って時が経つのを待てば終わる。家事もそういう気持ちでやってます(笑)皿洗いもシンクをきれいにするのも、ほとんどの家事は何も考えずに手を動かしていれば終わります。ラグビーは、練習中も試合中も辛いことが89割。みんなが協力してやっとトライが取れる。家事・育児もチームでしっかりやることをやった後は自分たちの時間にあてられると思えば、全然苦ではないです。

家事・育児にも活きているラグビーの精神

  僕はラグビーがうまい選手というのは、気遣いができる選手だと思うんです。ラグビーって15人いて、1人のミスを回りがいくらでもカバーできるスポーツなんですよ。「ここちょっと失敗しそうだな」とか、「ここちょっとやられちゃうかも」というときに反応できる選手がいい選手で、危険察知とか、仲間がどうしてほしいとか、気遣いが大事なんです。

 うちの家庭でいえば、どうすれば相手が楽できるか、喜んでくれるのかを考えて動くスタイルなので、そういうところにもラグビーの精神が活きているのかなと思います。

垣永真之介選手

アスリートの妻は“尽くしてくれる”という思い込み

 家事・育児との向き合い方は最初から今のようだったわけではなく、妻とは衝突もありました。特にアスリートの妻というと、「尽くしてくれるいい奥さん」みたいにイメージされがちですよね。僕も勝手にそういう思い込みから入って、押しつけちゃってるみたいなところもあったんですが、それは違うなと。アスリートとして自分の体は自分で管理するべきだし、それ以外でも自分のことは自分でやるべき。そういう当たり前のことに気づいてから、何事もしっかり考えて取り組めるようになりました。

 夫婦の絆を深めるためには、言いたいことはしっかり伝えて、お互いがぶつかり合うことも時には必要なのかなと思います。日本代表の活動で、この3年間は半年以上家にいない生活が続いていたので、妻も僕に気を遣って言えないこともたくさんあったと思うんです。そのあたりのフォローがあまりできていなくて、それが今の僕にとっての課題です。

お互いに名前で呼び合い、「ありがとう」の言葉を欠かさない

 結婚して7年、いろんなことがあってケンカもしたけど、仲が良い方だと思います。うちはお互いに、相手を名前で呼び合っています。「パパ」「ママ」とは呼ばないし、「お前」とか絶対に言わないです。ちなみに妻からは「真ちゃん」と呼ばれています(笑)それから、小さいことでも何かしてもらったら必ず「ありがとう」を言います。お茶をいれてもらったらありがとうとか。

 今回のW杯フランス大会は、日本代表に選ばれたものの試合には出られませんでしたが、ここにくるまで本当に辛いことばかりで、うまくいかないこともたくさんありました。でも、ある時妻から「そんなに頑張らなくていいんだよ。逃げられる時には逃げればいいし、いつだって私たち家族がいるから絶対に大丈夫」と言われた時には、確かにそうだなと思って、心が軽くなりました。

 子育ては、のびのびと自由に ワンパクな息子との日常

 子育て方針について夫婦で話すことは全くないし、特に定めていなくて、気分任せですね(笑)自由にやりたいことをやればいい。のびのびと。

 会社は、育休や子育て支援制度が充実していて、社内でも男性の育業取得率は高いです。僕も子供が生まれて間もない頃に12週間育休を取りました。また、ベビーシッター補助制度もあり、育児が大変な時期に妻を少しでも休ませてあげられて、とても助かりました。

 息子は5歳になりましたが、今のところスポーツには特に興味が無いようで、電車、新幹線、ロボットが大好きです。ワンパクで、最近はヒーローごっこにはまってます。僕はいつも“やられ役”、悪役です。もし、今後「ラグビーをやりたい」と言ったら、「やりたかったらどうぞ」とは思いますけど、過酷なスポーツなので僕は生まれ変わったら絶対やらないです(笑)

垣永選手の家族写真

 

心に“思いやりスペース”で、夫婦もラグビーもうまくいく

 働きながら子育てをしているパパママたちは、家では家で大変だし、外でも大変なことがたくさんあって、忙しい中みんな本当に頑張っていると思います。でも、決して無理はしなくていいと思うんです。一番大切なのは、自分自身の健康。それがないときに無理して頑張っても、なかなか結果につながらない。自分の心と体がいかに健康であるかをまず大事にして、それから夫婦でお互いに気を遣えるくらいの余白を少し確保できればと。それがなくなってくると、ケンカが絶えなくなっちゃうんで。

 僕は、オフの日は、2年前から始めた趣味のバイクでリフレッシュしています。ちょっとしたことでも趣味や楽しみを見つけて気分転換を図りながら、心の中に思いやりのスペースを空けておくことが大事なのかなと思います。僕自身、そういうスペースができ始めてラグビーもうまくいきだしました。

 ラグビーの目標は、少しでも現役を長くやるというのと、このチームで1回でも多く優勝すること。あとは、子供がまだ小さいので、子供の記憶に残るようになるまでは、続けたいなと思っています。

 ストレスを溜め込まないように自分でケアして、うまく気分転換をしながら、明るく健康に人生を楽しみましょう!

 

垣永真之介選手