東京都が5,000名を対象に実施した「男性の家事・育児実態調査2025」。2023年(令和5年)に実施した前回調査(こちら)と比べて、どのような変化があったのでしょうか?
今回の調査結果について、専門家からのアドバイスをもとに家事・育児時間の男女差や、家事・育児分担に対する満足度の変化を紐解いていきます。さらに、夫婦間のコミュニケーションギャップや男性の育業(※)が進む中で新たに見えてきた課題や悩みなどにも触れながら、2回にわたって調査結果を紹介します!
※「育業」とは、東京都の公募によって決まった「育児休業」の愛称です。東京都では育児は「休み」ではなく「未来を育む大切なしごと」と考えるマインドチェンジを進め、育業を社会全体で応援する気運醸成に取り組んでいます。
池田 心豪さん
労働政策研究・研修機構(JILPT)副統括研究員
日本労務学会 理事
4児のパパ
『社会学で考えるライフ&キャリア』(中央経済社/共編著)
天野 妙さん
株式会社Respect each other代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント(一財)
生涯学習開発財団認定コーチ
3人娘のママ
『「男性の育休」家族・企業・経済はこう変わる』(PHP新書/共著)
イラストレーター
エイイチさん
1児のパパ
東京都Webサイト「TEAM家事・育児」で子育て漫画連載中
著書に「スキンヘッドパパの育児日記」(日経BP)
1.家事・育児時間の男女差が縮小!パパ・ママが一番欲しいのは「自由時間」
①家事・育児時間は男女とも減少 女性の社会進出や効率化、心理的負担軽減の影響か
Q.家事、育児、介護にかける1日の平均時間を教えてください
家事・育児等にかける1日の平均時間を見ると、男性は3時間29分、女性が7時間48分で、その差は4時間19分でした。前回の調査時は5時間26分の差があったことから、1時間以上縮小しています。注目したいのは、特に女性の家事・育児時間が前回より大きく減少していること。正規雇用や管理職として働く女性が増えるなど、女性の社会進出が進んだことに加え、外部サービスの活用などにより家庭全体での家事・育児時間が減少していることが要因と考えられます。
また、男性の育業が進み、夫婦一緒に家事・育児に取り組む場面が増えたことで、気持ちの面で女性の家事・育児に対する負担軽減が数字に表れたのかもしれません。
天野さんポイント
夫婦で分担する家事や育児の総量が、以前よりも減少傾向にあります。仕事と同様に、家事においても「タイパ(タイムパフォーマンス)」や「コスパ(コストパフォーマンス)」を意識する時代となり、家電や家事代行サービスを上手に活用しながら、無理なく家事をこなす人が増えていることの表れとも言えるでしょう。
また、1日に「8時間以上」家事をしていると答える女性が大幅に減っていることからも、長時間にわたって一人で家事・育児を担う“ワンオペ”のケースが少なくなっていることがうかがえます。その結果、家事にかかる時間が感覚的に短く見積もられている可能性もありそうです。
例えば、一人で黙々と作業していると時間が長く感じられますが、誰かと一緒に取り組むことで、時間は短く感じられるものです。家事も同じで、協力し合えば楽しいことは倍に、大変なことは半分になるのかもしれませんね。
池田さんポイント
男性が急に家事・育児を多く担うようになったというよりは、正社員や管理職として働く女性が増え、家庭全体でかける家事・育児の時間が減少したことのほうが大きな変化といえるでしょう。
家事の外部化が進んでいる面があるのかもしれません。例えば、外食やスーパーの総菜などを上手く取り入れる。そういう生活を支えるサービスが充実している東京だからこそ、家庭全体での家事・育児時間が減ってきているという面があります。
②家事・育児分担に対する「ママ」の満足度が大幅アップ!
Q.夫婦間における家事・育児分担に満足していますか?
男性の満足度は前回の調査と同様に高い傾向にありますが、依然として女性との差が大きい状況。ただ、女性の満足度は前回よりも大きく向上しており、「とても満足している+どちらかと言えば満足している」と回答した割合は、前回調査の48.0%から60.1%へと12.1ポイント増加しています。
女性の家事・育児時間が減少し、配偶者との時間差も縮まっていることから、精神的な負担が軽減されたと感じる女性が増えていると考えられます。
また、配偶者が育業している女性ほど、満足度が高い傾向も見られました。
池田さんポイント
子供と過ごす時間が減っていても、「満足度」は上がっている結果を見ると、子育ての中で義務として行うものは省力化しつつ、子供との関わりを大切にしている人が増えていると考えられます。育児の負担を減らして、子供との生活を楽しもうとする傾向が強まっているのかもしれません。
③パパもママも、一番欲しいプレゼントは「自分の時間」!
Q.家事・育児を頑張っている自分にプレゼントがもらえるとしたら、何が欲しいですか?
男女ともに「自分の時間」が1位となりました。特に女性は43.1%が「自分の時間」で、2位の「自分が欲しかったもの」(18.5%)を大きく上回っています。
実際、パパ・ママたちの自由時間はどのくらいあるのでしょうか。
④平日の自由時間は男女ともに約2時間。土日で目立つ男女差
Q.あなたの、1日の平均の自由時間を教えてください
平日の自由時間は男女ともに2時間前後で男女で大きな差は見られませんが、土日については、男女差が90分になり、男性のほうが長く自由時間を取れている傾向があるようです。
普段から家事・育児に奮闘しているパパやママにとって、自由時間の確保は生活の質や満足度の向上にもつながるはず。時にはお互いに、“一番欲しいもの”である自由時間をプレゼントしてみるのも、良いかもしれません!
2.「感謝される頻度」に男女間で大きなギャップ
その「ありがとう」は伝わっていない!?
①家事・育児分担の満足度向上のカギは「話し合い」と「感謝」
「家事・育児分担の満足度を上げるために重要だと思うこと」を聞いてみると、男女どちらも「夫婦間でよく話し合い協力をする」がもっとも多く、次いで「互いに感謝を伝え合う」が続く結果となりました。
「家事・育児分担の満足度」が伸びている中で、夫婦間のコミュニケーションを深めることが、さらなる満足度向上のカギとなりそうです。
②男性は「感謝しているつもり」でも、女性には十分伝わっていない!?
Q.配偶者が家事・育児をしたときに、あなたはどのくらいの頻度で感謝の言葉を伝えていますか?
Q.あなたが家事・育児をしたときに、配偶者からどのくらいの頻度で感謝の言葉を伝えられていますか?
「配偶者へ感謝を伝える頻度」は、男女ともに「毎日」が1位、「週に数回」が2位となり、お互いに感謝の気持ちを伝え合っていると思われます。
一方、「配偶者から感謝を伝えられる頻度」では、男性は「毎日」が1位だったのに対し、女性は「いつ伝えられたかわからない」が1位でした。男性が感謝を伝えているつもりでも、女性にはあまり伝わっていないという可能性があります。
③感謝を伝えないのはなぜ? 男性は「気恥ずかしい」、女性は「当たり前」
Q.感謝の言葉をあまり伝えていない理由を教えてください
感謝の言葉を伝えていない理由についても、男女間で大きな違いが見られました。男性は感謝を伝えることに「気恥ずかしい」と感じている一方で、女性は「家事・育児をやるのが当たり前」と捉えている方が多く、感謝の言葉を伝える考え方や意識に違いがあることがわかります。
また、女性は「配偶者からも言われない」という回答も多く、やはり感謝の言葉を“言われていない”と感じているようです。男性3位の「言わなくても伝わっている」という認識とはズレがありそうです。
天野さんポイント
夫婦の間でトラブルになるとき、その原因は内容そのものよりも「言い方」にあることが多いものです。そんなときこそ大切なのが、相手を尊重しながら自分の気持ちや要望をしっかり伝える「アサーティブ・コミュニケーション」です。
まずは、日頃から「○○してくれてありがとう」と、相手の行動や存在を認める「承認の言葉」を伝えることが、良好な関係づくりの第一歩になります。
また、「私はこう感じた」といったように、“私”を主語にして話すだけでも、相手への伝わり方が大きく変わります。これは夫婦間だけでなく、職場の同僚や部下との関係にも通じる、コミュニケーションの基本です。
さらに、男性が感謝を伝えるときは、少し大げさ気味に「ママ大感謝祭!」といったテンションで表現するくらいが、ちょうどいいのかもしれません。一方で、女性の側も「もっと感謝されたい」と感じたときには、「もう少し喜んでくれると、私は嬉しいな」と、素直な気持ちを言葉にしてみることも大切です。
池田さんポイント
家事や育児には「ここまでやれば終わり」という明確な線がありません。だからこそ、夫婦でしっかり話し合うことが大切です。「してほしいのにやってくれない」は大きなストレスになるため、お互いに「自分はどのくらいコミットして、相手にはどんなことを期待しているのか」を言葉にして共有しましょう。
また、思い切ってワンオペですべての家事・育児を夫に任せる日を作ってみたらどうでしょうか。そうすることで、普段は夫がやらない家事や育児にも取り組んでくれるかもしれません。
そして、夫も妻もやってもらったことにはその場で「ありがとう」と素直に伝えることが大切です。親が感謝を言葉にする姿は、子供のしつけにも良い影響を与えると思います。
④パパママのリアルな声を紹介!夫婦のコミュニケーションの悩みはこうして解決
女性が一番分担してほしいのは「名もなき家事」!
「名もなき家事」とは、「シャンプーの詰め替え」や「調味料の残量チェック」など、名前はないけれど日常の中で誰かが担っている、生活に欠かせない細かな家事のこと。名前がないために負担として認識されにくく、家事分担の不公平感やストレスの原因にもなりがちです。
「名もなき家事」の認知度は男女間で約20%の差があり、女性が配偶者にもっと分担してもらいたい家事の第1位に「名もなき家事」をあげています。また、「名もなき家事」を知っている男性ほど、家事・育児時間も長いという相関関係があることがわかり、男性の「名もなき家事」の認知向上が夫婦間のギャップを埋める糸口となりそうです。
天野さんポイント
まずは、家事を“見える化”すること、つまり言葉にして表すことが大切です。言語化することで、その行動に意味や価値が生まれ、意識も変わってきます。 例えば、家族だけが通じる“秘密の言葉”を使うと、ちょっと楽しくなって、家事の負担も軽く感じられるかもしれません。排水口でゴミくずをキャッチするネットを交換する家事を「キャッチャー交代」と名付けたりするなど、ユニークなネーミングを工夫するのもおすすめです。ちょっとした遊び心が、日々の家事を前向きにするエッセンスになるかもしれませんね。
Q.あなたは「名もなき家事」という言葉を知っていますか?
⑤円満夫婦の共通点は「会話」と「感謝」だった!
Q.配偶者との会話時間(土日)×夫婦円満
夫婦の会話時間が長いほど、夫婦円満と回答した人が多くなる結果となりました。
さらに、「配偶者から感謝を伝えられる頻度」と「夫婦円満だと思うか」の回答結果をクロス集計したところ、配偶者から感謝を伝えられる頻度が高いほど、夫婦円満という傾向が見られました。
また、男女ともに感謝を伝えられる頻度が高いほど、家事・育児分担の満足度も高いこともわかり、夫婦間のコミュニケーションと感謝の言葉が、「夫婦円満」と「家事・育児分担に対する満足度」の両方において、重要なポイントになるようです。




第2回は、男性の育業事情や子育て世代の悩みについての調査結果を紹介します。ぜひご覧ください!
すべての調査結果はこちらからご覧いただけます。
【男性の家事・育児実態調査2025】
調査期間:令和7年7月15日~8月21日
調査対象:都内在住の5,000名(男女各2,500名)
対象1 子育て世代…未就学児を持つ男女4,000名(男女各2,000名)
対象2 全世代…18歳~69歳の男女1,000名(男女各500名)














