目次
子育てマンガ「あの手この手でおもちゃを買って!」
プロフィール
エイイチ
東京のデザイン会社に勤めた後、フリーランスのイラストレーターに。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭インターナショナル・ショートフィルム・ショウケース部門優秀アニメ賞を受賞するなど、アニメ、漫画、イラストの制作で頑張るパパ。
〈実践編〉始めてみよう! 家事・育児
パパの出番です!
家事・育児にすぐ役立つエピソード集
すぐに実践でき、ありがちな失敗に対する心得など満載
エピソード1料理はレシピをしっかり読み込むこと!
料理が好きで、毎日の夕食は、基本的に僕が担当しています。料理はレシピ通りに作れば、きちんとおいしくできるもの。仕事でなかなか結果が出なくても、料理なら結果が出るので、ストレス解消にもおすすめです。初心者パパへのアドバイスとしては、「手を抜く」「品数を絞る」「レシピをちゃんと読み込んで、準備をきちんとする」の3つですね。
最初はごはんと味噌汁だけで十分です。あとは作り始める前にレシピを読んでおけば、「塩少々ってどれくらい?!」なんて焦って、失敗することもなくなります。子供も「パパ、料理上手ね」と褒めてくれるのも、モチベーションになっています。
S・H(39歳・会社員)
妻、2歳の女の子と3人暮らし。料理はもともと好きで、子供が生まれる前から担当。得意料理はイタリアンと韓国料理。
エピソード2やらせたい遊びではなく、子供がやりたい遊びを
公園遊びでは、ついつい大人が「これで遊んでごらん」となりがちですが、それよりも子供自身の興味や時間の流れに合わせることを心がけています。あとは、着替えやおやつ、飲み物のほか、植物・昆虫図鑑、子供が拾ったものを入れられるスーパーのレジ袋もあると便利です。
おすすめは虫眼鏡を持って散策すること。大人も子供も新しい発見があって、素直に楽しめますよ。子供の「なんで?」「どうして?」に対して面倒臭がらずに答えてあげることも大切ですね。公園遊びは、子供の想像力を伸ばすチャンス。子供が自分で考えて、自由に答えを出せるような環境づくりをして、親子で楽しい時間を過ごしてください。
長谷部雅一(41歳・アウトドアプロデューサー)
妻、6歳の女の子と3人暮らし。人と自然と社会をつなぐことをテーマにプロジェクトを展開する有限会社ビーネイチャー取締役。著書に『ネイチャーエデュケーション』(ミクニ出版)など。
エピソード3ふらっと気軽に子供と半日旅
泊まりがけの子連れ旅行は交通機関やホテルの予約など、事前の綿密な準備が必要ですが、半日で行って帰ってこられる距離なら、ふらっと思い立ったら気軽に出かけられます。私が決めているのは、子連れで訪れることができる場所、午前中出発して夕食は自宅で食べるくらいのゆったりスケジュール、テーマパークなどの混み合う場所は行かない、という3つです。
東京からの半日旅のおすすめは、川遊びやバーベキューができる「秦野戸川公園」、ムーミンの世界に大人も子供も癒やされる「トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園」です。行き先や目的は夫婦で相談して決めるのも大切です。
吉田友和(42歳・旅行作家)
妻、3歳、1歳の女の子と4人暮らし。初海外旅行で夫婦世界一周を敢行したのをきっかけに、旅行作家として活動を開始。ここ数年は“半日旅”にも力を入れている。著書に『東京発 半日旅』(ワニブックス)など。
エピソード4子供に魔法を伝える手品
日常的にマジックを見せると新鮮さや魔法のような芸の魅力が薄れてしまうので、子供にマジックを披露するのは、お友達が集まる会やパパ会などの特別なシチュエーションに限定するようにしています。子供は「パパはみんなを喜ばせるために魔法つかいをやっている」と思ってくれているようです。
特別な道具がなくてもできるマジックとしては、割り箸を使ったり、ティッシュを使ったものがあります。インターネットで検索すると初心者向けのマジックのやり方も見つけられるので、参考にしてみてください。デパートのマジックコーナーで売っているようなものも、子供たちは大喜びしてくれます。子供は楽しむことが大好きで、楽しそうにしている大人のことも大好きです。パパ自身が楽しみながら、子供に喜んでもらえるのがマジックの魔法だと思います。
魔法つかいKOJI(39歳・プロマジシャン)
妻、2歳の女の子と3人暮らし。料理はもともと好きで、子供が生まれる前から担当。得意料理はイタリアンと韓国料理。
エピソード5子供も喜ぶ地域のコミュニティバスが大活躍
子供と出かけるときはリュックに着替え、お手拭き、ハンカチは必須。行き先は公園や児童館などの慣れた場所が一番おすすめです。子育てアプリやSNSで情報収集して行き先を見つけたり、人気のイベントやテーマパークに行ったりすることもありますが、子供が飽きても大丈夫なようにおもちゃ、絵本、おやつなどを持っていきます。
出先の食事は、ファストフードやファミリーレストランのアプリを駆使して、子連れでも入りやすい場所をすぐに見つけられるようにしてあります。クーポンがあるのもお得でいいですよね。便利なのが地域のコミュニティバス。安くてのんびりできるし、子供たちも大喜び。遠回りになってもイベント気分でわざわざ乗ることもあります。子連れでのお出かけでは、親も張り切りすぎず、リラックスして、子供と一緒の時間を過ごすことを一番大事にしています。
S・H(39歳・会社員)
妻、6歳の男の子、3歳の女の子と4人暮らし。仕事は忙しくとも、子供と一緒に過ごす時間にパワーをもらっている。子供とお出かけするのが大好き。
「26歳、20歳息子たちと仲良しパパ」の子育ての秘訣
子供と長く仲良しでいられるには?
好きなように、ありのままに生きてほしい
弱点も含めて自然体で子どもに見せる
食のジャンルを得意とするライターの小栗雅裕さんは、共働きの妻と子育てをし、息子たちは現在26歳と20歳です。今も、一緒にキャンプをしたり、そば屋での作法を指南したりする仲の良い親子。その関係はどうやって育まれたのか。小栗パパの子育てについて、聞きました。
――ズバリ、息子たちと仲良しパパでいられる秘訣を教えてください。
うーん、特別なことはしていません。でも、子供を授かったと分かったその日から、それぞれが1歳になるまで毎日、日記をつけました。子供に話したらウザがられるかもしれませんが、私にとってはとてもよかったですね。
体調が日々変化していく女性と違って、男性は親になるという実感がもちにくいじゃないですか。大したことは書いていませんが、妻が今日はだるそうだったとか、こんなものは食べられたとか、生まれてからは子供たちを見ていて気付いた小さな変化など。何でもいいからとにかく毎日書き続けた。書くことで親になる自覚や子育てへの意識は深まりました。
――20年間、子供たちのお弁当を作り続けた、元祖“弁当男子”ですよね。
誰かが作らなかったら子供たちの昼飯がないわけですし、市販品より自分で作った方が安心だし、料理って楽しいですから。
実は、わが家の数少ない決まりごとの1つが、「夕飯は揃って食べる」ことなんです。一緒に作るのも楽しいし、みんなで食べるとおいしいということを実感させてあげたら、他には何もいらないんじゃないかな。食べることって生きる基本ですから。
仕事で忙しいときも、時間をやりくりして、私と妻が協力し合って作っているのを見てきたせいか、子供たちはできることは自然と手伝ってくれるようになりました。中学・高校生になってからは、後片付けは全部子供たちがやってくれています。
「友人の家に行って食事をごちそうになっても、普通に片付けを手伝えるのは、親のおかげかな」(次男・朔也さん)
――お弁当以外に、小栗パパが主担当になっていた育児はありますか?
子供が生まれてからずっと続けてきたことは、絵本を読むことですね。妻は授乳や日中の育児と仕事でへとへとに疲れているので、寝る前の本読みは僕の担当。毎晩、読んでいました。
次男の幼稚園の入試のとき、妻は仕事で来られず、僕が「遊びに行くぞ」と言って保育園から連れ出して向かったのです。取材途中の僕はラフな格好。周りは祖父母まで付き添い、親子3人でスーツ姿という人ばかり。あまりに違う雰囲気だったので、気後れするかなと思ったのですが、面接で好きな本を聞かれたら、次男が好きな絵本について夢中で話し出して、すっかり先生たちと打ち解けたなんてこともありました。
あと風呂は、小学生のうちは男同士で一緒に入っていました。狭いマンションのバスタブだけれど、僕が入ると息子たちも入ってきて。特別な話をするわけじゃないけれど、一緒に心を緩める時間ですよね。
「絵本を読むだけじゃなくてハリネズミが冒険する話を作って、聞かせてくれていた時期もあったよね」(長男・千隼さん)
――夫婦で子育てについて決めていたことはありますか?
子供が生まれたときから「男のくせに」とか「男の子でしょう」とは、言わないと決めていました。むしろ、今は魚を下ろせたり、肉をうまく焼けたりする男の人ってカッコいいでしょう。世間が決めた“らしさ”なんでてどうでもいい。好きなように、ありのままに生きてほしいと思っていたので。
ついでに言うと、僕は「勉強しなさい」と言ったことがないんです。プレッシャーをかけていいことなんて何もない。
例えば食べ物だって好き嫌いがあってもいい。嫌いなものを無理に食べさせなくたって、味覚は年齢でも変わってくるし、おいしそうに食べている人を見ていたら、自然と食べてみようかなと思うときがやってきます。それと同じで、「勉強しろ」って言われるより、面白そうだと思ったらやってみようとするし、自分の好きなことならちゃんとコツコツ努力すると思うんです。
「でも、勉強のことをあまりに言われないから、小学校にあがったときにクラスで一人だけ、ひらがなが書けなかった。その後も、勉強に関しては自由放任だったから、中学生になる前にさすがにこれはまずいと自覚して、勉強をしました」(次男・朔也さん)
そんな小栗パパを子供たちは、どう見ているのでしょう。長男でイラストレーターの千隼さんは、「父はとにかく無理をしない、自然体の人。料理のように自分が得意なことはうれしそうにやって見せるけれど、弱点もそのまま子供たちに見せてくるので、仲良し親子というか、一番身近な仲間の一人かもしれません」と答えてくれました。
プロフィール
小栗雅裕さん
食分野の編集者、ライターとして書籍や記事を手がける。ブルーベア主宰。少しの工夫で食材のおいしさを引き出せる料理の面白さを息子たちにも伝えつつ、食の世界を探求している。
ビジネスリーダーに学ぶ
すぐに実践したい家事・育児アイデア集
パパの家事・育児、どうやればいいの? 『子育て経営学』の著者・宮本恵理子さんに、いまどきのパパたちの子育て事情と真似したいパパの子育てアイデアを教えてもらいました。
パパ同士がつながって、子育ての悩みを共有
宮本さん 「いまどきのパパたちは、とても自然体で子育てを楽しんでいるように思います。共働きが当たり前で、家事も育児もパパもやるものというのが自然体で身についています。もうひとつ、『イクメン』とひとつの型にはめられるより、父親のあり方は人それぞれという柔軟な感覚もあるようです。仕事も家庭も人生の一部と、上手くバランスをとっているように思います。
最近は、パパたちがフェイスブックでグループをつくって、子育てや家事の悩みを共有したりもしています。ネットワークをつくって悩みを可視化。課題も解決方法もみんなで共有するというのも、SNS世代のパパたちらしいですね。『子育て経営学』では、30代を中心とするビジネスリーダーのパパたちの子育てをインタビューしたのですが、彼らに共通しているのは、周囲をうまく巻き込む、夫婦がチームとなって子育てや家事をしていること。そして、最も印象的なのが、パートナーである妻をリスペクトしていることです。
子育ての環境や条件は家庭によって違いますが、これらはどんな家でも取り入れられる方法だと思います。子育てや家事には、仕事で養ったスキルを生かせるシーンがたくさんあります。ぜひ参考にして、子育てや家事をパパ自身も楽しんでください」
アイデア1.パパ同士のネットワークで悩みを共有
フェイスブックなどのSNSで子育てパパとつながり、悩みや困りごとを共有。意外な解決方法がみつかったり、子育てパパとしての気持ちがお互い理解しあえることで、励みになるはず。
アイデア2.パパ友同士で担当制を導入
保育園や習い事の送迎、休日の遊び相手も、交代ですれば負担も軽減。1日中、子供の遊び相手をするのは大変でも、1時間交代なら思い切り子供に集中して相手ができそう。
アイデア3. 周囲を巻き込んで、地域で子育て
夫婦ふたりだけではできないことも、地域のパパ友、ママ友、近所の人たちの手を借りることで解決。大勢の目の中で育つことは、子供にとってもメリットがいっぱい。
CASE
西村琢さん (ソウ・エクスペリエンス社長)
ご近所の仲間を巻き込んで、頼り・頼られるネットワークを構築。周りに迷惑をかけてはいけないという思い込みを捨て、お願いする気持ちで周囲を頼る子育てを実践しています。頼り、頼られる関係は信頼にもつながり、地域のみんなで子育てを楽しめます。
普段はお願いするほうが多いので、自宅にはいろんな子供や大人が自由に出入りできるようにしたり、休日は子供たちをまとめて連れ出したりしています。お願いするのは気が引けるし面倒ですが、面倒の先に安心や楽しいことが待っています。
アイデア4.子育てと家事は家庭内プロジェクト
家庭内プロジェクトのチームリーダーはパパとママのふたり。TODOリストを洗い出し、各自が得意なほうを担当するようにする。やるべきことを可視化することで、ママの負担を減らしてパパが参加できることが明確になるはず。
アイデア5.アウトソースできることは手放す
家事は家電で効率化できることも多いので、食洗機やお掃除ロボットなどで積極的に時短を。シルバー人材センターなど第三者を上手に利用するのも方法だ。その分、子育てを楽しむ心の余裕が生まれる。
アイデア6.育児休業を取得する
子育ては限られた時間。パパもぜひ育児休業を取得して、24時間子育てにどっぷりハマってみよう。子育てや家事のやりがい、楽しさ、大変さを知ることは、パートナーへの思いやりや感謝にもつながる。
CASE
小沼大地さん (NPO法人クロスフィールズ代表理事)
第二子の子育てで1カ月の育児休業を取得しました。経営者としての仕事はゼロにできなかったので、仕事も少しだけ自宅でやるようにしましたが、自分にとってはベストな方法でした。子育てに全力で集中できたこと、人に権限を委譲することを学んだことなどメリットはたくさんありました。育児休業中は家事全般を担当したので、それまで知らなかった「名もなき家事」にも気づくことができました。父親としても、家族の一員としても、自分の役割に自信を深めることができたと思います。
アイデア7. 「人を育てる」喜びを実感しよう
思い通りにならないことも多い子育てだが、人の成長に立ちあえるというのは、何よりの喜びをもたらしてくれる。子育てで自分自身も人間として成長できるので、仕事の人間関係もよりスムーズに。
アイデア8.働き方を工夫する
テレワークなど、会社に拘束されない働き方が増えている。柔軟な働き方ができれば、パパも子育てにもっとコミットができるもの。テレワークやフレックスなど柔軟な働き方ができる企業は、子育て積極派のパパたちからも人気を集めている。
アイデア9.パパも子育てしやすい社会に向けて発信を
ビジネス視点で子育てを見てみると、パパの子育ての社会的な環境はまだまだ整っていな部分が多い。例えば、男性用のトイレにはオムツ替えシートが少ないのもその一例だ。社会がもっとパパの子育てを応援してくれるよう、気づきや体験談をどんどん発信していこう。
アイデア10. パートナーへのリスペクトを大切に
一緒に子育てをして家族を運営するのが、パートナーのママ。日頃から感謝と尊敬、そしてたっぷりの愛情を持って接することで、お互いの信頼関係が築ける。夫婦で協力し合って、子育てのさまざまな壁を乗り越えよう。
プロフィール
宮本恵理子さん
エディター・ノンフィクションライター。働き方、生き方、家族をテーマに執筆活動を行う。写真家のキッチンミノル氏と共に、「家族製本」プロジェクトを主宰。著書に『子育て経営学』(日経BP社、2018年)
夫婦は人生における究極の提携パートナー
家庭全体の「最適解」を探すことが大
僕の家事・育児のコミット度合いは、お恥ずかしいくらい大したことはないんです。ただ大学教員という職業柄、忙しくても時間のコントロールは利くので、毎週月曜は「家にいる日」と決めています。
朝から研究や執筆の仕事をして、夕方になったら小学1年生の長女を学童に迎えに行く。その後、5年生の長男をテニス教室に送り届けて、迎えに行ったついでにスーパーで夕食の材料を買います。僕の定番はホットプレートで作る大量の焼きそば。一度に蒸し焼きそば6玉にキャベツ1玉、豚肉1キロを使います。これが一番楽だし、しかも先に肉だけを焼いて、つまみながら一人でビールが飲める(笑)。いい気分になってきたところでキャベツと麺を入れて、出来上がったら子供たちを呼びます。
あとは月並みですけど、風呂掃除をしたり、洗濯物を畳んだり。できることはやるようにしていますが、うちは妻が料理や掃除が好きなので、けっこうやってくれています。ただ、開発援助の仕事をしている妻は海外出張も多く、今週はインドネシアに行っていて1週間不在。それでも家が回っているのは、車で15分くらいのところに一人で住んでいる僕の母が助けに来てくれるおかげです。うちは嫁姑の仲が本当によくて、たまに僕が夜中の11時くらいに帰ると、妻が母と晩酌していたりします。
アメリカで仕事をしていたときによく分かったのですが、親に頼るのは日本に限らず世界中で普通にあることなんですよ。親の手も借りながら、夫婦の仕事の状況に合わせてフレキシブルに家を回していく。それで家庭の結束が強まったらむしろいいことですよね。母は息子家族の役に立ちたいという欲求が満たされるし、妻も助かる。母の気持ちが分かるから、僕もなるべくお礼を言うようにしています。
家事・育児の分担って理屈の話と感情の話に分かれて、どこの夫婦でも問題になるのは感情のほうだと思うんです。経営学にエモーショナル・インテリジェンス(感情的知性)という考え方があって、感情をどうコントロールするかというのはビジネスにおいてすごく重要なことです。人間の感情には中長期的に持つものと瞬間的に起こるものがあって、後者はちょっと我慢するとコントロールして収められる。特に怒りはそうです。僕も40代になってからですが、仕事でも家庭でも、怒りを意識的に管理するようになりました。
妻も僕も負けず嫌いなので、ケンカをしても結局最後は感情的になって着地しません。だからすごく頭に来たら、一晩寝たりおいしいものを食べたり、僕の場合はお酒を飲んじゃったりして、自分の中で収めます。まあ、お互いに歩み寄る気持ちも持つようになったのかな。
家事・育児の中に、経営学に通じる気づきはすごくあります。僕からすると、人生における究極の提携パートナーは妻です。僕にも妻にも生まれ育った家のやり方があるけれど、今は家庭という新しい事業を「我々」という単位で運営しないといけない。家庭全体で見たときに最適な意思決定、最適なやり方って何だろう? そういう視点を持つのはすごく重要だろうと思います。
子供との関わりでも、経営理論でいうところの「内発的動機」を重視しています。人間は基本的に、給料や出世といった外発的動機よりも、面白いとか、承認欲求といった内発的動機のほうが重要で、やる気が出る。だから子供はなるべくいっぱい褒めるようにしています。
ただ、会社経営と子育てには大きな違いもあります。それは「答えが分からない」ということ。会社の業績は決算という数字で表れますが、子育ては、子供自身が死ぬ瞬間に「ああ、私の人生はすごく幸せだったな」と思えるのが究極の成功だと思うんです。でもそのときに、ほぼ間違いなく親はいない。我々は、子育ての結果を誰一人知らないまま人生を終えるんです。結果は分からないけれどやらなくてはいけない。だからこそ正攻法はないし、面白いんです。僕自身は、今この瞬間に子供が笑うこと、幸せだと感じることをしてあげたいと思っています。
「日記を書いていたことは知っていたけれど、そんなに長く書いていたなんて初耳」(長男・千隼さん)