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 地域と関わって育つことは子供の成長にどんな効果があるのでしょうか。日本福祉大学の教授で、地域の子育て支援に関する著書を多数持つ渡辺顕一郎さんにお話を伺いました。

親以外が子育てをするのは人間の特徴

 地域の子育ての重要性を考える前に知っておきたいのが、そもそも子育ては家庭だけで行われてきたものではないということです。

 動物学などの研究では、母親以外が子供を養育することを「アロマザリング」といいますが、人間はこのアロマザリングが発達している動物です。哺乳類で見てもごく一部の種にしか見られないという報告もあり、人間の特徴の一つであるといえるでしょう。他の動物に比べて人間の子育ては長期にわたるため、莫大な労力と時間がかかるのです。だからこそ、母親だけで子育てすることは不可能で、父親が育児に参画することや、親族や地域の協力が必要になるわけです。現代社会において、地域や行政などの子育て支援サービスが必要なのは当たり前のことだともいえるでしょう。

現代は子育てが家族だけに集中

 かつての日本の社会では、一時保育などのサービスがなくても、おじいちゃんおばあちゃんや地域の仲間などが子供を預かってくれました。もちろん、これ以外にも子供のしつけを手伝ってくれたり、親に対して子育ての経験を伝えてくれたりなど、地域の人たちがアロマザリングの一端を担ってきたのです。ところが核家族化が進むと、地域との関わりが希薄になっていきました。その象徴的な存在が東京をはじめとする大都市です。

 子供が健やかに育つためには、子供を守る“安全基地”“居場所”としての働きと、子供の自立を促す働きの両方が必要です。かつての社会では、家族だけでなく、親族や地域社会がこれらの働きを分担していました。しかし、現代のような地域から切り離された核家族では、この両方の働きをもっぱら親が担うようになってしまったのです。その結果、育児が子供を過剰に守る方向に傾きがちになってしまいました。

 過剰に守られて育った子供は、リスクを冒して自分からチャレンジするより、守ってもらえる環境の中で、できることをするようになります。例えば、親から「言うことを聞きなさい」ということばかりを強調されてきた子供が、学校で真面目に授業を聞くことができても、十分に自己主張ができず、自発的に行動するよりも、むしろ大人の顔色を伺うようになってしまう場合が挙げられます。「かわいい子には旅をさせよ」という言葉がありますが、子供の自立を促すためには、子供が自ら考え行動することを推奨したり、新しい環境に背中を押したりすることも必要なのです。

地域では多様な人々と交流できる

(インタビュー)たくましく育てたいなら子供を地域に送り出そう

 では、どうすればいいか。まずパパとママの両方が育児に参画することで、どちらか一方が「子育て」という仕事を抱え込まないようにすることが大切です。そのうえで、子供を地域に送り出しましょう。

 地域には年齢も立場も異なる多様な人たちがいます。子育てひろば、放課後子供教室などで、ボランティアとして活動する地域の方々がいらっしゃいますし、子育て支援センターや児童館などに行けば、子供にとって同年齢の仲間だけでなく、異年齢の子供たちとも出会えます。

 子供たちは地域と関わることで、社会が多様な人たちでできていることを知り、社会性を成長させていくのです。世代や考え方の違う人たちと、どう折り合いをつけていくかを学びます。この社会性は将来、組織や集団で活動していく力や、様々な環境に適応していく力を育むことにつながります。地域は子供たちがたくましさを身に付けるために、大切な役割を果たしてくれるのです。

(インタビュー)たくましく育てたいなら子供を地域に送り出そう

 地域の子育て支援とは、かつての日本社会にあった地域による子育てを、現代社会のあり様に沿って実現しようという試みだといえます。ですから、パパとママには子育てを自分たちだけで抱え込まず、地域にも助けてもらいましょう、とお伝えしたい。まずは、子供を連れて地域のイベントに参加したり、様々な地域の子育て拠点や子育て支援の活動などに積極的に参加し、子供と地域との接点を作ってあげてください。