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第12回 パパの育児参画を促す制度が拡充 イクメン社員を支える企業のチカラ

目次

子育てマンガ「イクボスで変わる今と、これから」

イクボスで変わる今と、これから1イクボスで変わる今と、これから2平日の公園にてイクボスで変わる今と、これから3俺の時とは大違いイクボスで変わる今と、これから4随分変わったんだなイクボスで変わる今と、これから5こうやって次の世代にも今の考えが伝わっていくのですね

プロフィール
エイイチ
東京のデザイン会社に勤めた後、フリーランスのイラストレーターに。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭インターナショナル・ショートフィルム・ショウケース部門優秀アニメ賞を受賞するなど、アニメ、漫画、イラストの制作で頑張るパパ。

パパの育児参画を促す制度が拡充 イクメン社員を支える企業のチカラ

有給の育児休業制度の創設、
子供の面倒を見ながら家で仕事ができるテレワークの推進など、
パパの育児参画をサポートする企業の制度が拡充しています。

今回は、多様な制度を活用して育児に参画するパパたちに、
会社の制度で自分自身や家族、職場がどう変わったのか伺いました。
あわせてイクメン企業を支援する東京都の施策を紹介します。

実践例(1)
有給の育休制度導入で取得率100%を達成
積水ハウス

 3歳未満の子供を持つ全社員に1か月以上の育休を取得してもらうことを推奨する「イクメン休業」制度を2018年9月に導入し、男性社員の育休取得率100%を達成したのが積水ハウスです。この制度のポイントは、育休期間の最初の1か月分を有給にしたこと。育休期間は無給になる企業が多い中、経済的な安心感を確保したことがパパたちの背中を押した要因の一つになっているようです。積水ハウスが9月に行った「イクメンフォーラム」にお邪魔して、制度を活用したパパたちにお話を伺いました。

積水ハウスが開催した「イクメンフォーラム」の写真積水ハウスが開催した「イクメンフォーラム」

CASE復職後は仕事効率が上がった

坂井祐貴さん

坂井祐貴さん家族の写真

 妻が職場復帰するのに合わせ、1か月間、育休を取得しました。入社10年目で仕事も楽しく、忙しかった頃です。そんなタイミングで1か月も休むのに不安があったので、育休取得前に数か月かけて仕事の引き継ぎなどの準備をしました。それも今思えば、いい経験だったと思います。不安だったのは仕事を休むことだけではありません。家事も不安でした。それ以前は、ほとんど妻がやっていたので、調味料がどこにあるのかも、買い物にはどこに行くのかもわかりません。一から勉強でした。

 育休を取ったことで初めて知ったことがいくつかあります。まず、妻が家でしていた仕事量の多さ。こんなに大変な仕事をしていたんだと驚き、改めて感謝の気持ちが芽生えました。それと職場の後輩たちの仕事力が高かったこと。自分がいなくても仕事はしっかり回っていたのです。後輩たちに刺激を受け、また妻をサポートするために、私自身も復職後は、仕事への姿勢を変えました。限られた時間でなんとかしようと考えるようになり、仕事効率は高まったと思います。

CASE子供の事情で休む社員に寛容になった

大村孝史さん

大村孝史さん家族の写真

 入社15年目、総務長という立場のときに1か月の育休を取得しました。正直なところ、自分が育休を取得するのは無理だろうと思っていました。ところが部下に相談してみると、全員が「家族のためにもぜひ取ってください」と後押ししてくれたのです。部下が全員、育休取得経験のある女性だったということもあるかも知れませんが、私が育休中、力を合わせて業務をフォローしてくれました。

 復職してからは、子供が熱を出したといった理由で休む社員たちを、非常に寛容に受け止められるようになりましたね。育休の経験がなかったらこういう感情は生まれなかったと思います。経験をさせてくれた会社には感謝しています。

CASE育休取得後、業績が上がった

林宏史朗さん

林宏史朗さん家族の写真

 これまで2回の育休を取得していますが、営業職なので、育休を取る前は「休んだらお客様に失礼になってしまうのではないか」と不安に思っていました。ところがお客様に事情を説明すると、皆さんが理解してくれたのです。私が育休に入る前に仕事の打ち合わせの場を設けてくださり、取得前の仕事はスムーズに進みました。

 育休を取得してから仕事に対して、「子供に見られたときに恥ずかしくないのか」を意識するようになりましたね。私は家に関する仕事をしているのですが、育児に参画することによって、間取りや設備をお客様に説明・提案するときに説得力が増したのではないかとも思っています。おかげで復職してから業績が上がっています。

実践例(2)
社内SNSでパパたちが情報を共有
武田薬品工業

 武田薬品工業のイクメン支援で注目したいのは、社内SNS。このSNSでは業務や趣味などの共通項があるメンバーで自由にグループを作成できるのですが、その中に育児への関心が高い男性社員を中心に440人以上が参加する「ファザーリング・タケダ」があります。社内のパパ・ママたちが子育ての悩みを共有し、情報交換を行っており、男性が育児に参画することが当たり前という意識が広がっています。

ファザーリング・タケダの投稿画面の写真ファザーリング・タケダの投稿画面

 ファザーリング・タケダのメンバーは普段はネットでつながっていますが、社員の家族を招く昨年のファミリーデーでは、メンバーたちでブースを出展しました。来社した家族の写真を撮ってプレゼントするというサービスを行ったそうです。

2018年に実施されたファミリーデーの写真2018年に実施されたファミリーデー

 ファザーリング・タケダの登録メンバーで、昨年12月から1か月半の育休を取得した小原功嗣さんにお話を伺いました。

CASESNSで先輩たちの育児を見て、予習

小原功嗣さん

小原功嗣さん家族の写真

 自分自身は育休を取得した先輩社員から勧められて、育休を取ろうと思うようになったのですが、体験談を本人から直接聞けない人もたくさんいると思います。そういうときにSNSは便利です。体験に触れる機会が増えますし、SNSならでは気軽さもあると思います。

 ファザーリング・タケダを通じて先輩方が育児をしている様子を見るのは、いい予習になりました。本を読んで情報収集しても、自分の会社にはフィットしないと思うことが多いかと思います。しかし、同じ会社に勤める人の実例なら自分にもできるのではないかと思えるのです。

小原功嗣さん家族の写真2つめ

 育休期間は、育児の楽しさや妻の日ごろの苦労を学ぶとともに、夫婦で自分の強みなどについて話し合いをしたり、家族で海外の語学学校に通ったりして、自分を磨く機会を設けました。こういった経験から得たナレッジはファザーリング・タケダなどを通じて多くの人にシェアしていきたいと思っています。

実践例(3)
上司から部下へ育休申請書類を手渡し
昭和電工

 SNSなどデジタル技術を活用してイクメンをサポートする動きが広がっていますが、その一方で、アナログな手法が功を奏している事例があります。男性の育休取得を推進するキャンペーン「パパキャン」を展開中の昭和電工は、上司から部下へ育休関連の書類をあえて紙で手渡しすることにより、育休取得者を増やしています。この取り組みについて、自身も3歳の娘を子育て中の人事部ダイバーシティグループのマネージャー、荒博則さんにお話を伺いました。

荒博則さんの写真

 昭和電工では育休開始後7日間を有給とする制度があります。パパキャンでは、その制度の案内文書と申請書類を一緒にしたセットを、育休取得対象者がいる部署の上司に送り、対象者に直接手渡しをしてもらっています。メールでファイルを送るのではなく、紙を直接手渡すのがミソです。

 男性社員の場合、育休を勧められても、仕事で迷惑をかけるかもしれないという思いや、周囲の目、特に評価をする立場の上司への気遣いから、躊躇してしまう面があると思います。しかし、その上司から直接書類を手渡されると、部下からすれば「上司から育休を取ってもいいという承認をもらった」という感覚になるんですね。

パパキャンで配られる書類の写真パパキャンで配られる書類。申請書までがセットになっている

 パパキャンなどの取り組みを続けてきたことによって、最近では男性社員も育休取得を当たり前に考えていて、配偶者の妊娠がわかると、「育休をいつ取ろう」と検討し始めるようです。ほとんどは1週間の取得ですが、復職する際に戻りづらかったという話は聞いたことがありません。

実践例(4)
自宅でテレワーク中に子育てを
アクトインディ

「子どもとおでかけ情報」を提供するサイト「いこーよ」などを運営するIT企業アクトインディは、育児中の社員が男女合わせて7割いますが、これまで育休を取得した男性社員はわずか1人しかいません。それでも多くの男性社員は育児に積極的に参画しています。それを支えているのが、コアタイムなしで5時から22時までの間どの時間に働いてもいいフルフレックスの制度と、出社しなくても自宅などで仕事ができるテレワークの制度です。
 7か月の娘を子育て中のプログラマーで、日常的にテレワークを利用している森山弘基さんにお話を伺いました。

CASE子供をあやしながらプログラミング

森山弘基さん

森山弘基さんの写真

 もともとは9時から18時くらいまで毎日会社で働いていましたが、娘が生まれてからは日常的にテレワークを利用するスタイルに切り替えました。現在は9時に出社して、13時まで会社で働きます。その後、昼食を食べて家に帰り、15時くらいから18時くらいまで自宅で仕事をしています。

 自宅では、作業しているスペースの近くに娘が寝ていて、ぐずったら抱っこしたりするため、比較的軽めのタスクをこなす形にしています。娘が体調を崩すなど家で何かが起こっても、すぐ対応できるし、会社でソワソワしなくていいのはメリットだと思います。朝起きたときに妻の体調が悪いことがわかったら、午前中からテレワークに切り替えることもあります。家族の状態に合わせて、仕事のスタイルを選べるのはいいですね。

 テレワークは社内のほとんどの人が利用しているので、利用しにくいという感覚はありません。それぞれが「お互い様」という意識があると感じています。役員も含めて全員のスケジュールが共有されているので、職場の仲間の状況に合わせて仕事の調整ができます。社長の予定に「息子の発表会」が入り、その影響で会議の予定がずれることもあったりするのですが、そんな情報が社内で共有されることにより、社員の子育てに対する意識は自然と高まっているのではないかと思います。

森山さんの自宅での作業スペースの写真森山さんの自宅での作業スペース

テレワーク導入企業やイクボス育成企業を東京都が支援

 東京都にはパパの育児参画を進める企業を支援するさまざま施策があります。今回はそのうちの2つを紹介しましょう。

テレワーク導入に必要な機器購入を補助

 まず、テレワーク導入企業を支援する施策です。都は東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会期間中の交通混雑緩和にもつながる「テレワーク」の導入を強力に推進しています。

 2019年度に都が行った調査によると、従業員30人以上の企業で、「テレワークを導入している」企業は25.1%。都は2020東京大会に向けて、「テレワークの導入率を35%とする」という目標を設定しており、テレワーク導入を加速化する事業を集中的に実施しています。

「東京都 多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)」のグラフ出典:「東京都 多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)」

 この事業は企業がテレワークを導入するにあたって必要な機器を購入する際、補助金を受けられるようにするもので、「はじめてテレワーク」と、「テレワーク活用・働く女性応援事業(テレワーク活用推進コース)」の2つの補助制度があります(いずれも募集は2020年3月末まで)。

 「はじめてテレワーク」は、名前のとおり、「はじめて」テレワークに取り組む企業への支援で、トライアルに必要な機器購入費等を全額補助します。従業員の規模によって限度額が異なり、300〜999人の場合は上限110万円です。注意が必要なのは、この補助金を受けるには、都が提供する無料の「ワークスタイル変革コンサルティング」を受ける必要があるということです(募集は2020年1月末まで)。このコンサルティングで、どの部門のどの仕事がテレワークできるか業務の棚おろしを行い、就業規則の改定や労務管理の方法、セキュリティ対策を検討することで、安心して実際の導入にすすめます。

 一方、「テレワーク活用・働く女性応援事業」の場合は、補助が全額ではなく2分の1、限度額は250万円。コンサルティングを受けず、「はじめてテレワーク」を利用しなくても申し込めるほか、サテライトオフィスの利用料補助もあります。

 詳しくは下記サイトをご覧ください。
https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/joseikin/

男性の育児参加に関する無料の研修

 もう1つの施策は、「東京都女性の活躍推進加速化事業」で行っている男性従業員向け研修。この中の「~イクボスとは何か~ 男性従業員の意識改革」と題した研修では、男性の育児参加や、育児休業取得について理解を深められます。従業員300人以下の都内中小企業の男性従業員なら無料で受講が可能です。

 受講の申し込みは下記サイトからお願いします。

 ※既に募集を終了している回や応募申込が定員に達している回もあります。詳しくはHPをご覧ください。

https://www.josei-jinzai.metro.tokyo.jp/purpose/male-employee/