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第4回「おにいちゃん!仕事をしないで家事や育児をする男の人は変わってるの??」
「パパは家事を「手伝う」ものなの?ソウタくんの答え探し」

僕はソウタ。小学5年生。10歳になって自分の将来を考えはじめたら、なんだか世の中にはボクにはわからないことがいっぱいあるみたいだ。妹のリコがまた大事だけど難しそうなことを質問してきたんだ。

おにいちゃん!仕事をしないで家事や育児をする男の人は変わってるの??

リコのイラスト
ソウタのイラスト

うちのパパも家事はするけど、やっぱりたくさんやるのはママだよね。

家事はみんなでやるものだし、仕事はパパにしかできないわけじゃないなら、パパ中心で家事をして、ママが仕事をしているって家もあるはずだよね?

リコのイラスト
ソウタのイラスト

確かに、いてもおかしくないね。

じゃあ、なんで私たちの周りにいないのかな?

リコのイラスト
ソウタのイラスト

うーん、まずは探してみよう!

男性で家事や育児を中心的にする人のことは「主夫」というらしい。学校から配られたタブレットを使って探してみたら、そんな主夫の人たちが集まったグループがあることがわかった!「秘密結社 主夫の友」なんか、怪しい名前だけど、主夫の人たちってどんな感じなんだろう?主夫の友のCEO、堀込泰三さんに聞いてみよう!!

堀込泰三さんの写真

ソウタのイラスト

堀込さんみたいに、家事や育児をする男性に会うことってほとんどないですけど、やっぱり変わっているんですか?

そうだね。“変わっている”かどうかはわからないけど“少ない”のは間違いないと思うよ。国勢調査っていう国がしている調査によると主夫は11万人くらい。結婚している男性が1600万人くらいいるから、だいたい140人に1人くらい。ちょっと大きめの学校で1学年に1人いるかどうか、って感じかな。

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

はあ、確かに少ないけど、思ったよりは多いかもしれません。

ただ、主夫の中にも仕事をしていない“専業主夫”と仕事もしている“兼業主夫”がいて、11万人は両方合わせた人数。仕事をしていない主夫は半分くらいだから、もっと少ないね。

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

主夫にも種類があるんですか?

うん。女性でも専業主婦と兼業主婦がいるんだから、別におかしくはないよね。

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

ああ、そうか。

ちなみにボクは仕事をしながら主夫をしているから兼業主夫だよ。

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

堀込さんはなんで主夫になったんですか?

よく聞かれるんだけど、それも女性が主婦だった場合には『なんでなったんですか?』とは聞かないよね?

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

そういえば、そうですね。

さっきも“変わっている”って言ってたけど、ソウタくんだけじゃなくて、ボクたち主夫は、そうやって何か珍しいものみたいに扱われることが多い。これって、こっちからすると違和感があるんだ。自分では普通のことをしているだけなのに『なんでそんなことしてるの?』って聞かれると、『あれ?自分はおかしいのかな?』って思わない?

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

そう、思うのかなぁ?

例えば、野球がものすごく流行っていて99%の人がやっている学校があったとしよう。そこでソウタくんは、自分が好きなサッカーをしているんだけど、『なんでサッカーしてるの?』って周りの人からいっぱい聞かれたら、変な感じがしない?

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

します。

そういう感覚。それって結構ツライ気持ちになっちゃうよね。そういうところが男性が家事育児に関わりにくいひとつの原因にもなっていると思う。

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

なるほど。

それに、世の中には男性にとっては家事育児より仕事の方が大事だと思っている人がまだたくさんいるから、“子育てなんて”という感じでちょっと軽く見ている人もいるんだ。

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

そうなんですね。

男性が育休を取りにくいって話は聞いたことある?

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

はい、ニュース記事で読んだことがあります。

育休を取るときは上司っていう偉い人に伝えないといけないんだけど、その上司が“男性が家事育児をするなんて”と思っていたら、言いにくいよね。日本はまだまだそういう人が多いから言いにくくて育休が取れない場合もあると思う。

堀込泰三さんの写真

全然意識してなかったけど、どうやらボクが何気なく聞いたことにも、どこかで男性は仕事をするのが当たり前だという感覚があったみたいだ。必要以上に“変わっている”って思われながら生きるのは大変そうだなぁ。

 

ソウタのイラスト

男性が家事や育児をしていて、他に困ることはありますか?

うん。日本の家事や育児の環境は基本的に女性がすることが前提でできているから、ちょっと困ることが出てくるんだ。

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

例えば、どんなところですか?

ソウタくんはあんまり気にして見た事がないと思うけど、ショッピングセンターとか図書館とか、みんなが使うところに、赤ちゃんのおむつ替えをする台があるのは知ってる?

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

ああ、見たことあります。

それがどこにあるかわかる?

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

え?・・・トイレの近くですかね?

そうだね。でもよくみると、女性トイレの近くにあることが多いんだ。場所によっては授乳室って言う赤ちゃんにママがミルクをあげるところと一緒になっている場合もある。ソウタくんは女子トイレの近くに男の子ひとりで行くことに抵抗はない?

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

それは行きにくいですね!

そう。それに学校でプリントを渡すときに『これお母さんに渡してね』って言われたことはない?

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

ありますね・・・

それって別にお父さんに渡してもいいものだよね?

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

はい。じゃあ、なんでお母さんって言うんだろう?

確かに以前は女性が家事や育児をする家がほとんどだった。だから、その女性が使いやすいように環境も意識も整えられていったのは、やさしい配慮だったんだ。でも、男性も家事や育児をした方がいいってなった時に、ちょっと使いにくくなってしまった。

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

そしたら、男性も使いやすいように変えればいいんじゃないですか?

そうだね。でも、みんななかなか気づかなかったんだ。これが男性にとって使いにくいって。

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

なんで?使う男性が少ないからですか?

それもあるんだけど・・・左利きみたいなものかな?

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

左利き?

世界的に見ても圧倒的に右利きが多いんだけど、ボクたちの生活の中には右利きが使いやすいように作られたモノがたくさんあるんだ。

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

そうなんですか?

自動販売機のコインを入れるところ、自動改札、カメラのシャッターは右側にあるし、ハサミや包丁とかも右利き用が普通。

堀込泰三さんの写真
ソウタのイラスト

ボクは右利きだから全然気がつかなかった。

そうなんだよ。ほとんどの人が使いやすいと、気がつかないんだ。それと似ているよね。ただ、最近は男性トイレの方におむつ替えの台があるところも増えたし、学校などでも“お母さん”とは言わないで“おうちの人”っていうように変わってきているよ。以前は左利きを右利きに矯正することが多かったけど、今はそれが個性として受け容れられるようになった。それと同じように、男性が家事や育児をすることに対する周りの人たちの反応や施設も変わってくると思うから、そうしたらもっと家事や育児をする男性は増えていくんじゃないかと思うよ。

堀込泰三さんの写真

その日の夜、ボクはパパと一緒に皿洗いをした。背が高いパパにはちょっと窮屈そうで堀込さんが言っていたことに納得した。その話をすると、リコも納得したみたい。

みんなと違うことをするのってそんなに難しいんだ。

リコのイラスト
ソウタのイラスト

ボクも全然知らなかったよ。

じゃあ、ママが仕事をするのも難しいってことなのかな?

リコのイラスト
ソウタのイラスト

仕事をする女性はたくさんいるからそんなことないんじゃない?

でも、前にママは難しいって言ってたよ。

リコのイラスト
ソウタのイラスト

仕事と家事で忙しいってことじゃなくて?

だったら忙しいって言うでしょ?難しいってどういうことだろう・・・

リコのイラスト
ソウタのイラスト

うーん・・・

おにいちゃん!ママが仕事をするのって何が難しいの??

リコのイラスト

これは、文字通り難しいな・・・よし!次はそれを調べてみよう!

<協力してくれた人 堀込泰三さん 秘密結社主夫の友CEO>

1977年生まれ。
東京大学大学院を経て大手自動車メーカーでエンジン開発に携わる。
2007年 長男誕生時に2年間の育休を取得。その後、子どもと過ごす大切な時間を増やすため「子育て主夫」に転身。主夫になったきっかけは、妻が博士研究員としてスタンフォード大学のあるアメリカ・カリフォルニアに行くことになったこと。妻の海外赴任が決まった当時、会社員だったが迷わず育児休業を取得。家族そろって渡米。ところが妻のアメリカ滞在が当初予定より長引き、育休期間が切れてしまう。一旦帰国し仕事に復帰したが、家族と離れて暮らす寂しさに耐えかねて退職を決意。主夫となって再渡米。
家族でアメリカ生活を送った後、現在は、日本で翻訳家やライターとして子どもと過ごす時間を最も大切にしている。「秘密結社・主夫の友」のCEOとしても活動中。主夫や育児に関する講演も行っている。

(次回へ続く)