「すべての人にハッピーなひとときをお届けし、価値を創造する」というミッションを実現するため、一人ひとりの個性を尊重し、ダイバーシティ&インクルージョンの推進に積極的に取り組んでいるコカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社。
コロナ禍における在宅勤務への速やかな移行や、コアタイムのないスーパーフレックスの導入、営業部門への直行直帰の推進など働く場所や時間に捉われない柔軟な働き方を進めている同社において男性の家事・育児参画を推進する取組を伺いました。
取材にご対応いただいた方
執行役員人事・総務本部長
上村 成彦さん
人事・総務本部 戦略推進部長
木下 梨紗さん
取組のきっかけ
コカ・コーラ ボトラーズジャパンは日本各地にあった12のボトラー社が統合を経て、2017年4月に誕生しました。統合を進めるにあたり、これまで異なる企業で働いてきた約1万6千人の社員の意識を一つにするため、カリン・ドラガン社長の「これまでのやり方は選択肢にない」という考えのもと、スピード感を持って働き方改革を進めてきました。
例えば、個性や前向きな考え方を歓迎し、尊重することを”Sawayaka Style”と称し、ジーンズやスニーカーといったカジュアルな服装を可とする「Sawayakaドレスコード」の導入や、職場の風通しを良くするために呼称は役職ではなく「さん」づけにするなど、わかりやすい形での意識改革に取り組み、社員が能力を発揮しやすい職場環境づくりに努めてきました。
ワークライフバランスの実現は、育児や介護などによって時間的制約がある社員の能力も、最大限に発揮させることにつながります。その環境づくりとして、「トップメッセージ」、「制度の周知」、「風土の醸成」の3点を重点項目とし、定期的に社内調査を実施し社員の声を吸い上げ、要望を随時キャッチして取組を進めています。
管理職の「腹落ち」につなげる意識改革
社員のワークライフバランスを実現することで、例えば子供を持つ家庭において、性別問わず家事や育児に参画して生活を充実させたり、企業にとっては、生産性の向上という相乗効果も生み出します。ですが、社内の特に管理職以上の年齢層を中心に「男性は外で働き、女性は家で子育て」というアンコンシャスバイアス(※自分自身は気づいていない「ものの見方やとらえ方の歪みや偏り」。無意識の偏見のこと)がありました。アンコンシャスバイアスは、自分自身では意識しづらく、本人はゆがみや偏りがあるとは認識していないため、意識改革を図るためには「なぜ意識を変える必要があるのか」、「性別問わず、家事・育児に参画することが会社にどのようなメリットを与えるのか」等をしっかり腹落ちさせることが必要不可欠です。
そこで、管理職以上を対象にアンコンシャスバイアスに関する研修を行っています。その結果、「トレーニングを通して、多様な社員が働きやすい環境づくりについて考えるきっかけになった」、「自分とは異なる立場の社員が抱えている悩みが分かり、視野が広がった」といったポジティブな意見が多く寄せられるようになりました。
さらに、意識改革に有効であるダイレクトコミュニケーションを図るため、年に2回、社長以下役員が全営業エリア(1都2府35県)のうち10ヶ所で、管理職1,800名にメッセージを伝え質問に回答するタウンホールミーティングを実施しています。ここでも経営トップが経営方針として、「男性の家事・育児参画が重要である」ということを発信しています。
マインドチェンジ 若手男性社員の「心のバリア」を壊す
アンコンシャスバイアスの払拭に向けた取組が浸透する前は、若手男性社員たちにも、「制度はあるが、本当に取得していいの?」という心のバリアがありました。「育休中、連絡が付かなかったら迷惑がかかるのでは」、「業務調整は上手くいくか」、「顧客に育休のための日程調整を依頼していいのか」がその理由でした。しかし、アンコンシャスバイアスの研修によって管理職の意識が変わったことや、制度の認知拡大によって、周りの社員の理解も進み、育休や多様な制度を使いやすくなっています。
「パパエプロン」
男性社員が育児参画と育児休暇を取得しやすい風土を醸成するためのポイントは「男性本人の育児参画への意識」「職場の同僚の理解・協力」「上司の後押し」です。そこで始めた取組が「パパエプロン」という制度です。
「パパエプロン」とは、子供が誕生した男性社員の上司が、対象の男性社員へ育児参画に関するメッセージとともにオリジナルデザインのエプロンを、同僚にも見えるところで手渡すというシンプルなものです。
「パパエプロン」をもらった男性社員は育児参画への意識が向上します。加えて、職場全体に「あの人は子供が生まれたんだな」「育児に取り組めるように協力してあげよう」という心遣いや共感が広まり、社員一人ひとりの理解が深まります。
さらに、上司のマインドチェンジの促進にもつながります。部下に何も伝えずにエプロンだけをポイッと渡すわけにはいきません。「育児のための休暇をしっかり取り、育児に参画するように。そのためのエプロンですよ。」と説明する必要があります。同僚たちも聞いていますから、上司は腹落ちしていないとしっかりと伝えることができません。このように「考える」というワンステップが意識変革に役立っています。この取組は職場全体のポジティブなマインドチェンジにつながっており、これまでに300枚以上を配布しています。
アナログな取組ですが職場内の意識改革の効果は大きく、どの会社でも比較的取り組みやすいのではないでしょうか。
「育児との両立 制度活用サポートブック」
当社では、育児、介護、病気の際にも、就労継続を支援する様々な制度を設けています。ですが、「制度があっても活用法が分からない」という声があったことから、制度活用サポートブックを作成しました。どのような時に制度が活用できるのかだけでなく、育児休暇を取った先輩パパの体験レポートを社内SNSで発信しています。今後も、社員のニーズを踏まえ使いやすく更新していく予定です。また、部署による制度の活用方法の違いなど検討していきたいと考えています。
出産や育児に関するサポートブックを日・英両方で制作しています
在宅勤務体制と柔軟な働き方
新型コロナウイルスの感染拡大前から在宅勤務やテレワーク環境を整備し、2019年から東京都の時短プロジェクトに合わせて夏の集中期間にスポット的にテレワークを実施していました。その後、コロナ禍の半年ほど前から社長の発案により、「いい取組だから毎月やろう」ということになりました。結果的に、感染拡大防止のために否応なく全社員が原則在宅勤務となった際には、スムーズに移行することができました。ツールや制度をいち早く取り入れたことで、社員が在宅勤務に対応でき、みんなしっかり業務をしています。また、在宅勤務においては、男性の家事・育児参画という観点からも、子供の送迎を分担できるなど良い点が多数報告されています。
社員の反応
過去に育児休暇を取得した男性社員を対象にアンケートを実施したところ、以下のような意見が社員から寄せられました。
・在宅勤務のおかげで育児(朝のミルク、入浴、買い物の間の子守りなど)の協力ができ助かっています。
・家事をしながら業務を続けられるよう在宅勤務が出来る環境作りや、上司、同僚のサポートもあり特段取得に関して不満は感じておりません。育休取得の有無より、周囲のサポートや日々のコミュニケーションが大事であると実感しております。
・上司より男性育休制度について説明いただき、積極的な活用のアドバイスを受け、育休を取得しました。
全体として、自分の時間が増え、働き方改革の追い風になっています。夫婦それぞれが在宅勤務の場合、育休を取らずとも、時間をずらして仕事と家事を分担しているようです。
今後の展望
2018年の統合以降、スピード感を持って様々な偏見の払拭、意識改革に取り組んできました。しかし、約1万6千人の社員を抱える中で、まだまだ意識改革の浸透が不十分な職場があることも事実です。「パパエプロン」のような職場全体の意識改革に繋がる取組に該当する社員が全ての職場にいるわけではないので、どのようにして効果的なメッセージを届けるのかが今後の課題です。他社の取組でも良いものはどんどん取り入れ、迅速に対応していきます。
当社のミッションは「すべての人にハッピーなひとときをお届けし、価値を創造する」ことですから、お客さまだけでなく自分たちもハッピーであるべきです。育休の時だけでなく、日ごろから子育てができるように、会社として制度設計・時間創出に取り組んでいきたいと考えています。その結果、男性の育児参画・家事参画に寄与できればと思います。経営側が方針を明確に打ち出し、どれだけ強力に推進するか、今後ますます本気度が試されます。当社は、すべての社員がハッピーとなるよう施策を検討し続け、全方位的に推進していきます。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社のダイバーシティ&インクルージョンに係る取組はこちら
https://www.ccbji.co.jp/recruit/newgraduates/workstyle/02/