目次
子育てマンガ「名もなき家事ってなんだろう?」
プロフィール
エイイチ
東京のデザイン会社に勤めた後、フリーランスのイラストレーターに。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭インターナショナル・ショートフィルム・ショウケース部門優秀アニメ賞を受賞するなど、アニメ、漫画、イラストの制作で頑張るパパ。
〈実践編〉始めてみよう! 家事・育児
パパたちの不満、ママたちの不満を
どう考える?
パパの家事育児への参画をもっと進めるためには、パパとママ、お互いの不満や困り事などを、もっと知っておくことも重要。たくさんの子育て世代を見てきた、育休後コンサルタントの山口理栄さん、東レ経営研究所の塚越学さんにそれぞれの問題についてアドバイスをいただきました。
パパの家事育児への参画は、進んできています。ただ、積極的な人とそうでない人で二極化しています。この積極的でない人の中には、本当はやりたいと思っている人も少なくありません。
総合電機メーカーでソフトウェアの開発、設計、製品企画に従事。2度育休を取得し、部長職まで務める。2010年より現職。育休後職場復帰セミナー、キャリアデザインセミナー、管理者(イクボス)向けセミナーなどを実施。2014年よりイクボス企業同盟サポートメンバー。
その通りで、総務省の社会生活基本調査(共働き世帯、6歳未満の子供を持つ夫の育児・家事関連行動者率、2016年調べ)を見ると、パパが育児に費やす時間は増えています。
これは、家事育児に関心のある約3割のパパがより積極的に関わるようになったためで、実は残りの7割は、行動できていないことが分かっています。私の感覚的には、やりたいけれど、やれていない。仕事や家庭環境など、構造的に行動に移せていない人が多い印象です。
また、専業主婦世帯より共働き世帯が上回って久しいですが、その増加した共働き世帯のママは、パート・アルバイト、派遣社員など非正規雇用が増えているにすぎません。昭和時代の男女役割分業は大きな構造変化には至っていないと言えそうです。
家事と育児では、パパの関わり方も違います。「子供は可愛い」というパパは多いので、子供の面倒を見るけれど、家事はちょっと、という人が多い。
確かに、日本のパパは世界のパパと比べても、家事を圧倒的にやっていないですね(笑)。
ママが家事を手放さないケースも多い。家事をやらないことに対する罪悪感があったり、やってもらったけど、気に入らないからもう頼まなくなったりというケースもあります。意識的にも夫婦の対等な関係ができていけば、分担はもっと進みます。
パパも自分もやらなくてはと思ったり、ママもパパに言いやすかったりするのですが…。そのためには、保育園や学童保育の整備や無償化など、みんなが働ける環境が必要です。
パパの勤務時間の短縮や育休制度など、社会の仕組みが変わらないと、意識も変わらないのも確かです。ただ、その前にできることは、夫婦のコミュニケーションを取ること。これが全く足りていません。
以下、よく相談される家事や育児に関わるパパ、ママの不満や困り事の例を挙げてみました。自分たちのテーマで話す機会を作ってみてはいかがでしょうか。
「家事を手伝っているのに、妻には何もやらないと言われるから、やる気がしなくなった」
「手伝っている」という時点で家事や育児に腰が引けていますが、家事や育児には、シェアする気持ちや自分から楽しむ気持ちを持ちたいものです。今日は1日子供の世話をするとか、料理や掃除など、家事の中で得意なものがあったら、「自分がここはやる」と宣言して、任せてもらうことでもいいでしょう。好きなことなら、出来栄えもよくなるはずです。
ママもパパが家事や育児をうまくできなくても、任せ切ることは大切です。パパもママから期待されることで自分なりに試行錯誤していくようになり、家事育児を体験することで意識が変わっていきます。
「受援力」と言いますが、ママは、「助けて」といえることも重要なスキルです。職場はもちろん、家庭でも、パパや親、地域に助けてと言えるか、任せられるかは、家事シェアにはとても大切なことです。
「仕事が終わって子供の顔を見たいのに、子供が起きてしまうので、早く帰ってこないでと言われる」
寝かしつけているのに中途半端な時間にパパに帰ってこられると困るというママは多いですね。夫婦で子供が寝る時間が共有できているのであれば、パパは静かに帰ってくるようにするか、ママに代わって本を読み聞かせたり、寝かしつけたりすればいいのです。ママ側もパパを排除して、自分の理想のスタイルにこだわっているとなかなか一緒に家事育児をやっていくのは難しくなります。
「早く帰って来いといわれるが、周りは仕事をしているので帰れない」
妻のニーズに応えることよりも職場の空気を読むほうが大事だと思っているわけです。どちらを優先するかという問題で、帰りたければ帰ればいいんです。深刻なのは、業務量が多くて仕事が終わらないので帰れないというケースの方。
ダイバーシティやワークライフバランス、働き方改革に関する企業コンサルティング、職場に効果的な研修・ワークショップ構築・提案に定評がある。2009年、2011年、2014年に育児休業を取得し、男性の育児家事参画や子ども子育て支援にも詳しい。
最近、企業で働くパパに不満を聞いたところ、21時より前に帰ろうとすると、上司に嫌な顔をされるという人がいました。イクボス(※)を育てないといけないのですが、人手不足で難しい職場も多い。
※イクボス:部下や同僚の育児・介護等に配慮・理解のある上司
日本の人口推計上、人手不足は今後も続きます。同じメンバーでも、チームワークや人間関係の質を上げることで成果を上げ、ワークライフバランスも実現するイクボスが求められるのは時代の要請でもありますね。
中央大学教授の佐藤博樹さんが、「毎日ではなくてもいいので、週2日定時で帰って子供と必ずご飯を食べる日を決める」ことを提案しています。ママはパパが帰ってくる時間が分かり、パパは帰る動機ができる。職場でも、「今日は早帰りの日なので」ということで帰りやすい。仕事にメリハリができるし、早く帰って、お風呂に子供を入れたり、宿題を見たり、片付けをしたり、そういう家事が自然にできるようになります。先ほどのパパの不満・困り事2のように、子供の顔を見たいなら、起きている時間に早く帰ってくればいいのです。
早出してもいいし、ノー残業デーも生かさないといけません。過渡期の今では、自分の決意と覚悟がないと、仕事と子育ての両立なんてできません。職場の空気は読まず、でも職場に自分の想いは言葉で伝えて、まず実行。
家事育児よりも仕事を優先しているパパが意識改革できるのは、ママが諦めないで日頃から家事育児の話をしている家庭が多いと思います。私たちのセミナーなどで話題になると、「これがママの言っていたことか」と話が繋がって、できるようになったというケースもありました。
パパはママから言われるのは嫌(笑)。ああそういうことだったのか。と同じことでも専門家や実践者から言われて腑に落ちるわけです。
「育休明けに会社から短時間勤務でいいと言われ時短を選んだ。本当は、もっと働きたかったが、夫には相談できなかった」
時短を何も言わずに受け入れたことで、パパは今までのスタイルでいいんだと受け取ってしまう。まずは、夫と話をすることが大切です。働き方に対する意識が対等になれば、家事も対等になります。
「パパに家事や育児を頼んでも期待できない。自分でやった方が楽」
「チーム育児」が必要です。仕事でもそうですが、チームでやろうとすると相手に教えたり、思い通り動いてくれなかったり、いろいろと面倒くさい。さらにチームでは必ず混乱期がくると言われています。対立、不安、諦めが増える時期。ここで自分からチームを離脱し、ワンオペ状態になってしまう。混乱期を超えると、標準期から達成期へとチームが発展するのは仕事と同じ。混乱期でも辛抱強くチームワークを醸成していくことが必要です。パパのチーム育児を促進するのは、職場の理解と妻からの期待です。この期待は、ヘルプ程度ではなく、シェアのレベルです。
例えば、育休を取るときにどちらが取るかを夫婦で話し合ったかどうかを、セミナーで尋ねてみても、ほとんど手が上がりません。ママは自分が取るものだと思って、パパに育休のシェアを期待していない表れです。また、最近、企業の中には、パパの育休100%取得促進や、パパに1カ月育休を義務付けるような取り組みも出てきました。こうした職場の理解がパパの育児参画の後押しになる事例も増えてきましたね。
「夕飯の支度のとき、我が家は戦場状態なのに、夫は寝ているか、テレビを見ているか」
ママは、夕飯時は支度をしながら、あれもこれもやらなきゃと、考えています。ママが家事をコントロールしている家庭なら、パパは「いまやることある?」と聞いて、家事をシェアすること。パパも結構やってくれると分かって、イライラが減ります。
そうですね、育児家事をどちらかがやっているときに、どちらかが休んでいるとイラっときますよね(笑)。解消策の1つとして、パラレル育児家事を薦めています。例えば、ママが食事を作っているときに、パパは、子供の世話をするなど、夫婦が同時に育児家事をする。「私は〇〇するから、あなたは〇〇してくれる?」という声掛けです。
家が戦場の状態では、パパもフレキシブルな対応が求められるので、得意不得意はあっても「できない育児家事」は減らしていくことも大切です。そのときもやはり、ママは「3出し(ダメ出し、口出し、手出し)」は控えたいですね。人は行動した直後に嫌なことがあるとやらなくなる傾向があるからです。
どんな結果でも行動に対して、まず「ありがとう」と感謝の言葉をかけること。パパもママの質の高い家事に対して、当たり前と思わず、「ありがとう」といえるかは、とても大切なことです。
やってみよう!
「名もなき家事」チェックシート
家事は炊事・洗濯・掃除だけだと思っていませんか? 日々の生活の中には、こまごまとした「名もなき家事」がたくさんあります。靴をそろえたり、トイレットペーパーを交換したりといった名もなき家事の存在にすら、気づいていなかったという方は、ここで紹介するチェックシートでぜひ確認を。夫婦で相談しながら、初心者にもできる名もなき家事にぜひトライしてみましょう。
“ついで補充”家事
- (1)トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ハンドソープや石鹸の補充
- (2)ハブラシの交換
- (3)お茶の作り置き・購入
- (4)紙オムツ・粉ミルクの残量をチェック~購入
生活シーンの中で、時間を問わずにできる補充家事。トイレに入ったとき、冷蔵庫を開けたとき、ちょっとだけ意識を向けるだけでできる、超初心者向けの家事です。始めるなら、まずはこの中のどれかから。
“ついでにひと手間”家事
- (5)玄関の靴を揃える
- (6)トイレの便器、便座の裏側の掃除、トイレの床・手洗い場を拭く
- (7)お風呂の排水溝のゴミ・髪の毛を取り除く
- (8)うがいコップを洗う
- (9)手拭きタオルの交換
- (10)コンロ・電子レンジの油はね・汁こぼれの掃除
こちらも時間を問わず、生活の中で“気がつきさえすれば”ついでにできる家事です。玄関で自分の靴を揃えるときは、ついでに家族の靴も一緒に。トイレを使ったついでにササッと掃除するなど、タイミングを決めるのもおすすめです。
“空き時間利用”家事
- (11)家具上部や家電まわりのホコリを取る
- (12)床の片付け
- (13)エアコンなど空調機器のフィルター掃除や、加湿器・除湿器の水入れ&水捨て
自分が使わない場所にも意識を向ける必要がある分、やや中級編。とはいえ、家にいるときに、ちょっとした空き時間でこなせる家事です。テレビのCM中、コーヒーを淹れている間などを利用する感覚で。手入れがラクな家電を選ぶのも家事の負担を減らしてくれます。
“パパの定番”家事
-
(14)各部屋のごみ箱のごみを集めて分別。
ごみ箱が汚れていたら洗い、新しいごみ袋をセット -
(15)自転車・車のメンテナンス
(自転車なら空気を入れたりオイルをさしたり。車ならガソリンや車検など)
普段、家事にあまり積極的でなくても、「これならやっている!」という男性は多いのでは。ただし、ゴミ捨ては玄関からゴミ捨て場に運ぶだけから一歩進んで、ゴミをまとめたり、新しいゴミ袋をセットしたりするところまでやれると完璧です! 自転車や車のメンテナンスも立派な家事。家族の分もしっかりチェックするようにしましょう。
“後片付け”家事
- (16)買ってきたものをしまい、買い物袋を片付ける
- (17)子供を遊びに連れていく前の準備(遊び道具、オムツやミルク、食べ物飲み物、タオルなど)、後片付け(遊び道具や持って行ったものをしまう、子供の手洗いうがい、服が汚れていたら着替えさせるなど)
買い物や子供の外遊びなどは、出かけるだけで終わりではありません。家に帰ってきてからの片付けや後始末も、夫婦で一緒に会話をしながらやれば楽しみながら作業ができて、その分、早く終わることもできます。
子供の学校関連家事
- (18)幼稚園や保育園・学校で必要なものの把握・購入
- (19)幼稚園や保育園・学校・役所へ提出する書類の記入・準備
- (20)宿題チェック、音読カードのサイン、連絡帳の記入など
子供の学校関係のさまざまなタスクは、意外に負担が重いもの。育児に積極的に参加するためにも、できるところから分担してみましょう。毎日は無理でも、週末の宿題チェックから始めるなど、できるところからで大丈夫です。子供の様子がよく分かるので、その分、やりがいになったりします。
最初は1つのことから始めて習慣に
家事には、こまごまとした「名もなき家事」がたくさんあります。いつもきれいなタオルが使えるのも、家族の誰かが交換してくれているから。そこに気づくことさえできれば、日常生活の中でついでにやれること、ちょっと意識を向ければできることがたくさん見えてきます。
「やり方が分からない」ということもあると思うので、やる前に妻に一声かけて相談してみるといいでしょう。相手のこだわりもしっかり聞いたうえで、お互いが気持ちよく生活の小さな家事を分担。そうすると相手への感謝の気持ちも自然と生まれるはずです。
補充や交換の頻度を減らす、使い捨てタイプを上手に利用するなど、家事の見直しもできるようになります。交換頻度が少なくて済む長いロールのトイレットペーパーにする、靴の数を減らして玄関をスッキリしやすくする、などのアイデアも相談してみましょう。
最後に、大事なのは続けられること。一度に全部をやろうとせずに、簡単なことから1つずつ習慣にしていくのが、長続きのコツです。
夫婦の家事タスクを可視化しストレスのない分担をサポートするアプリ「Yieto」(https://yieto.jp)を企画・開発。家事という無償労働が家庭内で誰か一人に偏りすぎない未来の実現を目指している。家事家電マニアな一男一女の母。
これならできそう!
家事を楽しくするための小さな工夫や
チャレンジしたいすごいスキル
凄腕の家政婦さんのマッチングサイト「タスカジ」を運営する和田幸子さんに、ちょっとした工夫で家事が楽しくなる、効率よくできる「家事ワザ」を紹介していただきました。
家事分担の前に二人の家族像のすり合わせが大事
「子供を産み育てる」という明確な目的がある子育てと違って、家事は生活に付随する作業なので、夫婦間で押し付け合いになりがちです。まずは、家事を含め、どんな家族像や将来をお互いが考えているのか、夫婦で向き合って言葉にすることが大切だと思います。そこから逆算して今の二人の生活や分担などはどうあるべきか、を考えるのがいいと思います。
家事も夫婦それぞれに得意不得意、好き嫌いがあります。洗濯ものを畳むのは楽しい、買い物が楽しい、料理を作るのは好きなど、それぞれがストレスを感じない家事をピックアップして、それを認識することが大事です。二人とも苦手な家事はシェアするなど、お互いが「フェアである」と納得することが重要です。最初はそれを書き出して、「見える化」していくのがいいでしょう。
パパとママとでは、家事に対する知識量がかなり違う場合があります。手順をシンプルにした上で、工場と同じで手順や頻度などを二人で標準化し、共有しておくことが必要です。
パパが家事を自分ごと化できていないケースについてママからの相談を受けることがあります。オムツの置き場を教えても、繰り返し聞かれると、「仕事なら覚えるし、メモも取るだろうに、オムツの置き場には興味ないんだ…」と思って、悲しくなりますよね。
ママは、一緒に家族運営に取り組んでほしいと思っています。そしてママからの指示を受けて作業をするのではなく、家事や育児に主体性を持って取り組み、目の前に現れた問題に対して、「どう解決しようか」と一緒に考えてほしいのです。
そんな風に意識が変わると、家事や育児の情報もどんどん入ってくるし、工夫も凝らすようになり、スキルも磨かれます。それを一緒に考えてもらえず、寂しい思いをしているママは多い。ママがリーダー、自分は下働きだという考え方では、どれだけ家事をやっても評価されないかもしれません。
横浜国立大学経営学部を卒業後、富士通に入社。エンジニアとしてERP製品の開発に携わる。自身の課題でもある「家事と仕事の両立」を実現するため、家事代行サービスをオンライン上で提供する「タスカジ」を立ち上げる。日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2018「働き方改革サポート賞」受賞。一児の母。
掃除好きの人が言うのが、掃除する前と後でその差が明確な場所は、掃除が楽しくなるということ。窓拭き、換気扇周りなどは、初心者が楽しく掃除ができるところだ。
例えばトイレ。立って用を足す男性がいる家庭は、壁や床にも尿はねが飛び散っている。クリーナーを吹き付けたぺーパーでくまなく拭こう。玄関の靴に付着した泥、洗面所の飛び散った歯磨きペーストなども。
平均的には男性の方が、女性より背が高く、体力もある。換気扇や窓などの高いところはもちろん、粗大ゴミの外出しもパパが積極的に担当しよう。かさばる羽毛布団や掛け布団は、シーツでコンパクトに包めば省スペース化できる。
夫婦で家事を分担するためにはルール化・標準化がポイント。ぱっと見て分かるように水洗いとおしゃれ着洗いでカゴを分ける。使う洗剤もルールをシンプルにするために種類を絞る。収納作業をスピードアップしたいのであれば、服はハンガーにかけ、靴下やパンツは畳まないで重ねるというルールを作る。
調味料などの名前を、置き場とボトルの両方にラベリングしておくと、さっと見つけられ、消耗品のストック管理もできる。
ピンチハンガーは外側に長いもの、内側に短いものをかける「アーチ型」に、大きなタオルは重なり合う面がないように「じゃばら干し」にすると乾きが早い。必殺技のある作業は男性に響く!
捨てられないものや日常使うものを1軍、たまに使うものを2軍に分け、2軍は別の場所に移動して、1軍を取り出しやすくする。1軍は使って楽しいもの、いいものに絞ることがテクニックだ。
料理の作り置きは、土日にまとめてやる。ジャガイモやかぼちゃは美味しく冷凍するのが難しかったりするので覚えておきたい。苦手な作業は、慣れた家族や外注に出すのも手。タスカジさんに頼むと3時間で15品ぐらい作ってくれるので、その技をものにしたい!
参考:『予約の取れない家政婦タスカジさんのラク家事BOOK』(タスカジ監修、扶桑社)
限られた時間内に家事代行を終えるタスカジのカリスマ家政婦・サニー春さんとステラさんのラク家事のコツを紹介。
https://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594081058
「男性の家事・育児参加は当たり前」はまだ理想
現実的にできることから始める
「フツメン」になろう
「男性ももっと家事・育児に参加しましょう、育児休業を取りましょう」。パパたちに向けてそう掛け声をかけるのは必要なことです。ただ、勘違いしてはいけないのは、それが「理想」だということ。男性も家事・育児に参加するのが当たり前の世の中になったかのように受け取られてしまうと、全然応援のメッセージにならないし、逆にがっかりさせることにもなってしまいます。
日本は高度成長期以降、男は仕事、女は家庭という分業意識が浸透し、今も続いています。そして男性の働き方は、週5日のフルタイム勤務が前提になっている。だから独身の人も含めて有給休暇さえちゃんと取りません。Facebookなどで「今日は有休取ってすみません」みたいな報告をよく見かけるのも、「ルールに反している」という意識がベースにあるから。当然男性の育児休業取得率は伸びないし、ましてや時短勤務なんて、という話にもなるわけです。
こうした文化的な側面だけでなく、実際的な問題もあります。各国の男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数では、日本は149カ国中110位。フルタイムの男性の給料を100としたときに、女性は70程度です。それだけの賃金格差がある現状を考えれば、育児休業を取り、時短勤務をするのはどうしたって妻になります。
企業がいまだに「男社会」なのとは対照的に、地域は「女社会」です。私には3歳になる息子がいますが、平日に息子と出かけると、女性の姿が圧倒的。病院や児童館といった人との距離感が近い場所では居心地の悪さを感じます。
息子が赤ちゃんのころ、予防接種に連れて行ったんですね。そうすると、看護師さんやお医者さんが、明らかに私のことを駄目な人扱いしました。「赤ちゃんはこうやって抱いて、腕を出させるんですよ」とか「ああ、そんな変な持ち方して」、みたいな。確かに私の手つきは覚束ないのかもしれない。それでも頑張っている中で「お前はそんな程度だろ」っていう接し方をされると、すごく気持ちが萎えるんです。
そのときに私は、時短勤務になって軽い仕事しか任されない女性の気持ちが分かりました。私が感じた落胆は仕事の領域とパラレルになっていて、育児や介護を担っている女性が「おまけ扱い」されると嫌な気持ちになるのと同じなんだと思います。
男女平等の理想は理想として、それが実現していない現実がある。ではどうすればいいのか。これは長期的に考えるべきことと、今すぐできることを分けて考える必要があります。
例えば、うちの子供は認可外の保育園に通っていますが、認可の倍率を考えると、おそらくこのまま小学生になります。そうすると、待機児童の問題は我が家にとって、第2子が生まれなければ意味のない問題になるんですね。そもそも認可に入れた人や、保育園に預ける子どもを持たない人にとっても関係ない話です。でも「これはおかしい」と言い続ける人が一定数いないと、社会の問題は解決しないんです。
個人の寿命と社会が変わるペースは全然違います。北欧も元は性別役割分業の文化でしたが、30年くらいかけて男女平等へと舵を切っていきました。自分に利益がなかったとしても、将来に向けてそれが意味のあることならば、社会問題に何かしらコミットし続けていく。難しいですが、とても大事なことです。
一方で、すぐにできることもあります。それは「気づく」ということ。以前、若い女性ばかりを集めた職場の研修で「男性の上司にされて嫌なことはありますか」と聞いたら、多かったのが「おみやげを配っておいてと言われること」でした。男性は、「お前は若い女なんだから雑用をやっておけよ」と無意識のうちに思っている。これは一人ひとりが心がければ解消できますし、「見えない家事、名もなき家事」の問題とも根本的につながっています。
少なくない夫が、シンクにある食器を見て「ああ、食器がたまっているな」と思うだけで、洗いはしません。なぜ自分は素通りしようとしたのか? 「これは女の人の役割だな」と思ってやり過ごしていたことについて、自覚的になるということがきわめて重要だと思います。
私は毎日、保育園の送りを担当しています。10年前だったら男性は珍しかったでしょうが、今どきそう思う人はいませんよね。徐々にでもいいから数が増えていく、見慣れるということも社会が変わっていくためには大事です。
都会での子育ては、同じ敷地内に祖父母の家があったりするような地方に比べると、助けを期待できる血縁は近くにないことがほとんどで、地域のつながりも強くありません。ただ大切なのは、そうした現実を認識したうえで、どう自分で補うかということではないでしょうか。住んでいる自治体のサイトをチェックして、どんなサービスがあるかを知っておく。保育園の送り迎えでも、他のママやパパとのちょっとした会話から、地域の情報が手に入ったりします。
逆に都会ならではのメリットもあります。著名人の育児体験が聞けるようなイベントが頻繁に行われている場所は東京以外にあまりないでしょうし、動物園や水族館など、子連れで出かけられる施設も充実している。僕は3種類の施設の年間パスポートを持っていて、その日の子どもの希望に合わせて選んでいます。
私は常々イクメンではなく「フツメン」がいいと思っています。理想論としてのイクメンは分かる。でも最近は言葉の中身がもう詰め放題になっていて、家事も育児もする、さらには仕事もできて、場合によっては見た目もよくておしゃれだ、みたいなことになっています。
それよりも、「普通の男性」にとってどういうことが現実的にできるかを考えていくほうが、気負わずに動けると思うんです。「自分が名もなき家事のようなことをやらないのは、面倒なことは奥さんにやらせておけばいいだろう、という意識を持っているからじゃないか?」。ここまで認識を深められたら、かなりいいところまで来ています。じゃあどうしようか、という行動に移せれば、男性が変わるということになるのではないでしょうか。
目の前のことに対して「気づいて、認識して、行動する」という3ステップと、すぐに解決できない問題に対して意識を持ち続けること、その両方を大事にして欲しいと思います。