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子育てマンガ「家事の分担どうしてる?」
プロフィール
エイイチ
東京のデザイン会社に勤めた後、フリーランスのイラストレーターに。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭インターナショナル・ショートフィルム・ショウケース部門優秀アニメ賞を受賞するなど、アニメ、漫画、イラストの制作で頑張るパパ。
男性の家事・育児参画は進んだ? 東京都の調査結果を分析!
男性の家事・育児参画を進めるにはどうしたらいい? 課題はある?
東京都が行った「男性の家事・育児参画状況実態調査」の結果を、大正大学心理社会学部准教授で男性学が専門の田中俊之さんと、NPO法人ファザーリング・ジャパンの理事で東レ経営研究所チーフコンサルタントの塚越学さんが分析。気になるポイントを指摘しました。
田中俊之さん(左)と塚越学さん
【調査方法】
調査は2019年8月23日から29日かけて東京都在住の18歳以上70歳未満の男女5000人(うち2000人は未就学児を持つ男女)を対象にインターネットを通じて行われました。
家事の担当は「妻がほぼ全て」「どちらかといえば妻」で90%
ーまずは未就学児を持つ男女の家事の分担状況について見ていきましょう。小さい子供を育てながらの家事は大変ですが、結果を見ると、女性の回答でいえば、「妻がほぼ全て担っている」と「どちらかといえば妻が多く担っているが、夫も一部担っている」が、合わせて約90%を占めています。
塚越 男女に多少違いはありますが、概ね女性が家事を担うケースが多い現状は見て取れます。今までもいろいろなデータを見てきましたが、どれも同じような傾向があったので、やはりこれがリアルなのだと感じます。
田中 変わりつつあるところだとは思いますが、男性の方が収入が多く働く時間が長いことを考えると、妻の方に家事が偏る傾向になりがちではあります。それが顕著に出ている結果ですね。
家事の分担を話し合っていない
ーではなぜ、妻が担うケースが多いのでしょうか? 先ほど「妻がほぼ全てを担っている」と回答した人にその理由を聞いたところ、男女ともに「夫の仕事が忙しいから」が最も多くなっています。一方で「話し合いで分担を決めたから」と答えた人は、男性で「6.3%」女性では「0.7%」しかいません。
塚越 「話し合いで分担を決めたから」と答えた人が少ないだけでなく、「特に決めたわけではないがなんとなく」の割合が多いことは気になりますよね。しかも、この「特に決めたわけではないがなんとなく」は、「妻がほぼ全て担っている」以外の分担状況でも総じて高い。「どちらかといえば妻が多く担っているが、夫も一部担っている」では男性が33.2%、女性が32.7%、「夫と妻で平等に担っている」だと男性が35.8%、女性は43.8%。つまり、家事の分担については話し合わずに、なんとなく決まっているという現状がわかります。
田中 話し合うことなく進めてしまうと、すれ違いが起こりがちですよね。そのときは良くても後になって不満が生じてくるケースも少なくない。だからこそ、ちゃんと話し合って、お互いが納得した形を見つけることが必要だと思います。
塚越 一方で、「夫の家事スキルが低い」という答えの割合は女性だけでなく、男性も多い。つまり、夫自身も家事スキルが低いことを自覚していることがわかります。ここはシンプルに改善の余地がある部分ではありますよね。スキルを上げるための機会を探したり、作っていったりしたらどうでしょうか。
田中 おっしゃる通りだと思います。それともう一つ、「妻がほぼ全て担っている」と思う理由で、「夫の育った家庭環境や夫の親の考え方の影響」を挙げた割合が男女で大きく違うんです(男性5.6%、女性20.6%)。女性は夫の育った環境の影響が大きいと感じているけど、男性はそこが理由だと思っていない。認識にギャップがあるんです。
塚越 そう、そのギャップを放置したままだと、夫は自分に対する妻の評価に気づくことができません。これは、分担状況が改善しない一つの要因だと思うので、夫婦で話し合いをする必要が感じられます。
自分はやっていると思う夫の勘違い
ー認識のギャップという点では、家事に関して自分が行っているかどうかの質問があるんですが、男女で認識が違うんです。特にギャップが大きいのが買い物。男性は57.0%が「夫婦で分担している家事」と認識しているのに対し、女性は76.1%が「主に自分が行っている家事」。大きな開きがありますよね。こういうギャップはなぜ生まれるのでしょうか?
塚越 夫の方は、週末に買い物に付き合っただけで「やっている」と認識しているのかもしれませんね。しかし、毎日のように買い物をしている妻から見れば、週末はほんの一部でしかない。買い物という家事をシェアしたことにはならないという認識なのでしょう。セミナーなどで、夫婦に目の前でアンケートに答えてもらうことがあるんですが、夫は「やっている」と答えがちです。
田中 実際はやってないのにやったと認識していたら改善に向かうのは難しいですよね。このギャップを埋めるためにも、やはり話し合いが必要なんだと思います。
分担状況が偏っていても納得?
ー家事が妻に偏っている現状についてどう感じているかを問う質問に対して、「適当だと思う」と「適当かはわからないがこのままでいい」という回答が、男女ともに半数を超えています。
塚越 そうなんです。普段セミナーなどでもよく尋ねるんですが、現状を肯定する声は多いんです。話し合いをしない理由に繋がっているんじゃないでしょうか。
田中 社会心理学の知見では、良かろうが悪かろうが、人は現状を受け入れてしまう傾向があると指摘されています。あまり変化を求めないわけですね。まさにそういう傾向が出ているところだとは思います。とはいえ、「もっと夫が担うべき」と変化を求める声も多いんですから、ここは一歩踏み込んで話し合ってみてはどうかと思います。
ー家事の分担状況別の分担に関する考え方を見たクロス集計(未就学児あり・なしの合計で計算)があるんですが、「夫と妻で平等に分担している」場合は、70.7%が「適当だと思う」と答えています。「妻がほぼ全て担っている」場合は、「もっと夫が担うべき」が増え、「適当だと思う」「適当かはわからないがこのままでいい」は減ります。
田中 平等に分担していて、それを「適当だと思う」と納得しているのはいいですね。
育児は男性の分担率が高め
ーここまでは家事の分担状況を見てきましたが、次は育児の分担状況について見ていきましょう。家事に比べると男性が担っている割合は高いように感じます。
田中 そうですね。僕も経験がありますが、家事の場合、スキルが低く慣れない人がやろうとすると、かえって手間を増やしてしまうことがありますが、育児は単純に人手が多い方が分担できることが増えます。そういう意味では参画しやすいのかもしれません。
塚越 「夫と妻で平等に分担している」という回答においては、ギャップが少ない傾向にありますね。
平等に分担している夫は育児が好き
ーその「夫と妻で平等に分担している」理由について、「特に決めたわけではないがなんとなく」は多いんですが、「夫が育児を好きだから、やりたいから」と答えている人が男女ともに多くなっています。
塚越 家事にしても育児にしても男性はまったく関心がないというわけではないんだと思います。でも、家事においては行動がまだ足りていないので妻に伝わっていない。育児に関しては行動がわかりやすくて、好きでやっていると目に見えて感じられるので妻も認めているところがあるんだと思います。
田中 それも平等に分担しているからだと思います。やはりしっかりと参画することは大事ですね。ただそれに加えて話し合いをすれば、もっと興味や関心を持っていることがちゃんと伝わると思います。
男性が積極的に育児参画している家庭の例を男性は参考にてほしい
ーでは、この分担の現状についてどう思っているのかを見てみると、男女ともに「もっと夫が担うべき」という声がある一方で、「適当だと思う」「適当かはわからないがこのままでいい」が半数以上。ここでも変化を求めていない人は多く見られます。
塚越 ただ、育児について「もっと夫が担うべき」、つまり変えたいと思っている人の理由をみると、「友人・知人夫婦等に比べて妻の負担が大きいと感じるから」で男性が3.7%に対して、女性は19.3%になっているんです。明らかにギャップがあります。女性は男性が積極的に育児に参画している他の家庭の例をよく知っているということでしょう。男性はもう少し男性が積極的に育児を行っている他の家庭に目を向けてもいいですね。
田中 男性は今でも仕事中心の生活をしているケースが多いので、他の家庭のことを知る機会が少ないのでしょう。それから男性は自分の父親との比較で自分を評価する傾向があります。父親よりはやっているから自分は十分やっていると納得してしまうんですね。女性からみると、まだまだ不十分であるにもかかわらず。
アンケートをきっかけに夫婦で会話を
ー最後にこれらの現状を踏まえて、何かアドバイスはありますか?
田中 夫婦の間にはさまざまな認識のギャップがあることがわかります。まずはそれを知ることが大事なわけですが、そのためには夫婦で話し合うことが必要です。自分たちの家庭で大切なことは何か、できることは何かと考えてみてはどうでしょうか。
塚越 話し合いをどうやったらいいのかわからないという夫婦も意外と多いと思います。そんなときは、今回の調査の質問に夫婦で回答していくのもいいでしょう。一緒に答えていってもいいし、別々に答えて後で答えを比べてもいい。自然に話し合いになるでしょう。
※今回紹介したデータは東京都の「男性の家事・育児参画状況実態調査」報告書の内容を一部抜粋し作成しました。本調査の本編及び概要版はこちらからご覧ください。