東京都は都内在住の男女5,000名を対象に家事・育児に関する調査を実施しました。
専門家の協力のもと、今回の調査結果から浮かび上がった家事・育児における男女の意識差やホンネ、育業等の実態を紐解きました。今日から使える一言アドバイスとともに3回にわたってお届けします!
第1回は、家事・育児分担やパパ・ママのホンネについて取り上げます。
\ パパ・ママ必見 /
今日から使える専門家の一言アドバイス
高祖常子さん
子育てアドバイザー、キャリアコンサルタント
NPO 法人ファザーリング・ジャパン理事
3児のママ
『感情的にならない子育て』(かんき出版)
山口慎太郎さん
東京大学大学院経済学研究科教授
1児のパパ
『「家族の幸せ」の経済学』(光文社新書)、
『子育て支援の経済学』(日本評論社)
クスっと笑える「あるある」家事・育児漫画
エイイチさん
イラストレーター
1児のパパ
東京都Web サイト「TEAM 家事・育児」で子育て漫画連載中
「スキンヘッドパパの育児日記」(日経BP)
1.教えて!パパ・ママのホンネと不満
①家事・育児分担、満足しているパパと、モヤモヤを抱えるママ
Q.夫婦間における家事・育児分担に満足していますか?
約8割のパパが家事・育児分担に満足していると回答した一方で、なんと半数以上のママには不満があるという結果に……! このギャップの原因はどこにあるのでしょうか。
②ママのホンネは「言わなくてもやってほしい」
Q.配偶者に対する不満を教えてください
約半数のパパが「特に不満はない」と回答。次に多かったのは、「やっても文句やダメ出し」をされるという不満でした。一方、ママは「自分が言わないとしてくれない」という不満が第1位。 パパに悪気はなくても、“ママがやるのが当たり前” な状況になってしまっているところに、ママのフラストレーションがたまっているのかもしれません。
- 言われる前に率先して家事・育児に取り組んでほしい
- 全てヘルプでしかないので、当事者意識を持ってほしい
- 食事を作ってくれるが、後片付けなどは全て私。片付けまでが家事だとわかってほしい
- 育児に関しては協力的だが、家事はほとんどしてくれない
- 土日は夫も仕事が休みなのに、家事が私任せなのが不満。家事はやってもらって当然だと思っている
- 気づいた方がする家事に全然気づいてくれない
- 雑( 食器を洗うが、汚れが残っている。掃除機をかけてくれるが、隅や荷物の下などやらない )
- 感謝の気持ちを言葉で伝えてほしい
「察してほしい」は伝わらないと心得ましょう。そもそも8割近くのパパは現状に満足しているので、ママの大変さや困りごとに気づいてないといえるでしょう。今回の調査結果を見て、ぜひパパにも「そうなのか!」と気づいてほしいですね。 ママも、自分から積極的に思いを伝えていきましょう。ダメだとあきらめるのではなく、やってほしいことは、口に出して言うのが一番です!
- 精一杯やっているつもりであるが、いつも叱られる
- 干した洗濯物の干し方を何も言わずに変えられるのがイラッとする
- 自分のやり方しか認めない
- やり方が違うと文句を言われ、やり直しさせられる。こちらが文句を言うと喧嘩になるから言えない
- 家事を抱え込んで機嫌が悪くなり、当たられることがある。そうなるくらいなら、こちらに家事を振ってほしい
- 「 やってほしいことを察してほしい」という要求がなかなか男性には難しいので、具体的に言ってほしい
どちらが「主か、従か」という考え方がそもそも違いますよね。役割分担で、例えば「専業主婦(主夫)だから多くやる」というのはそのご家庭の選択肢としてあると思いますが、どちらも親である以上、お互いが「主」であるべきという自覚を持つことが大切です。 家事についても、二人ともフルタイムで働いている場合、「妻が主で、夫が従」などということはありません。指示を出してほしいというのではなく、「次に何をすべきか」を考えられるようになるといいですね。
※実態調査でパパ・ママから寄せられた声をもとに作成
夫婦ともに、時間も気力も体力もいっぱいいっぱいだと、お互いの良いところを認め合う余裕がなくなってしまいますよね。よく聞くのは「ちょっとやっただけですごく“やった感” を出す」というパパへの不満と、「がんばってるのに、できてないところばかり指摘される」というママへの不満。そして、「俺だって大変なんだよ」「私のほうがもっと大変だから」と、“大変合戦” になってしまうんです。 そんなときに実践してほしいのが、“アイ(I=私)メッセージ” で伝えるということ。「あなたはなんでやってくれないの?」ではなく、「私(I)はこれで困っているから、やってほしい」と、自分を主語にして、相手も自分も大事にしながらコミュニケーションを取ってみましょう。
2.不満はどこから?見えない負担がこんなに!?
①やってる「つもり」が積もって溝になる !? 男女の認識に大きなズレ
Q.あなた自身とパートナーの家事・育児時間について教えてください
家事・育児について、「自分と相手はどのくらいやっているか」を聞いてみると自分の時間は多く見積もり、相手の時間は少なく見積もる傾向に。パートナーの家事・育児の実態をしっかり把握できていない結果が明らかになりました。
他の人がやってることがよく見えないのは、人間として当たり前です。私たち研究者の世界でも、「グループ研究で自分は全体の何割やったと思うか?」とアンケートを取って全員分を足すと、100%じゃとても収まりません(笑) 夫婦の付き合いがこれからも続くわけですし、大事なところで協力していかなければなりません。お互いが寛容になって、相手が見えていないところでも努力していることを認めていけるといいですね!
②見えない負担 日常に潜む「名もなき家事」
「名もなき家事」とは、具体的な名前は付いていないけれども、生活をする上で欠かすことのできない、ちょっとした家事のと。消耗品の購入や補充、散らかったものの片付け、献立を考える……など、挙げればキリがありません。1 つ1 つの作業はささいなことに思える「名もなき家事」こそ、家庭内の「負担」や「不満」につながるとも言われています。
ひとくちに“ゴミ出し” と言っても、そこには名もなき家事が付いてきます。まとめられたゴミを集積所に持っていくだけなら、それは“ゴミ移動” です。もし、パパがゴミ出しの担当になったなら、各部屋からゴミを集めて分別して、何曜日が何ゴミの日か把握して出す。さらに、ゴミ袋の設置や補充まで担えるようになるといいですね!
Q.「名もなき家事」あなたと配偶者どちらが主に行っていますか?
具体的な「名もなき家事」の分担状況について聞いてみると、「自分のほうが多くやっている!」と感じている人が多い結果に。パパは「夫婦で分担している」という回答も多い傾向がありましたが、ママは圧倒的に自分がやっていると回答。日々の生活の中で発生する細かいことだからこそ、相手に見えづらく、ストレスの原因につながるのかもしれません。
分担は家庭ごとで居心地のよい割合でいいと思うんです。チェックリストを作っているご家庭もありますが、「名もなき家事」も含めてワンセットの“担当制” にするのもおすすめです。ポイントは、部分で任せない、主担当にして裁量がきくようにすること。仕事でも、部分的に依頼されても、「いつまでに何をどんな風に!? 」とわかりづらいですよね。そして、こだわりのある家事や相手がやってイラッとするものは自分でやった方がいいでしょう(笑)。ただ、相手に任せることを増やしていかないと自分の担当が増えるばかりなので、譲れない家事は極力減らしていくことが大切です。 もし条件を付けるとしても、1 ~2個まで。洗濯物を干すときは、「1回パンッ!とやって、間は10 ㎝くらい開けて干してね」とか。実際、ママの方が、こだわりがあって相手に渡せない家事が多かったりしますよね。でも、無理して頑張りすぎて、イライラしてばかりじゃ、つまらないですよね。自分に余裕を残しておけるように家事を省力化して、いかに楽しく家族で過ごすかを大事にして欲しいと思います。
第2回は、男性の育業や残業についての調査結果を紹介します。ぜひご覧ください!
すべての調査結果はこちらからご覧いただけます。
調査期間:令和5年7月31日~8月21日
調査対象:都内在住の5,000名(男女各2,500名) 対象1 子育て世代…未就学児を持つ男女4,000名(男女各2,000名) 対象2 全世代…18歳~69歳の男女1,000名(男女各500名)