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子育てマンガ「家族でアート」
プロフィール
エイイチ
東京のデザイン会社に勤めた後、フリーランスのイラストレーターに。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭インターナショナル・ショートフィルム・ショウケース部門優秀アニメ賞を受賞するなど、アニメ、漫画、イラストの制作で頑張るパパ。
芸術の秋到来!パパと絵を楽しもう!
暑さが去り、過ごしやすくなる秋は
じっくりとお絵描きに取り組むのにぴったりの季節。
子供と一緒に絵を描いて遊んでいると、
子供ならではの自由な発想に驚くことも多いのではないでしょうか。
今回は、
お絵描き遊びや美術館の楽しみ方など、
絵を通じて親子のふれあいを深めるためのポイントを紹介します。
絵が苦手なパパ・ママも、お絵描き遊びが楽しくなること間違いなし!
子供とお絵描きでコミュニケーションを取ろう
子供との遊びの中で取り入れられることが多いお絵描き。
親子で楽しくお絵描きをするためには、どのようなことを意識すると良いのでしょうか。
25年間保育士として勤め、現在はお絵描きにおける対話の重要性について全国各地で講演会等を行っている土居桃子さんにお話を伺いました。
お絵描きは子供とのコミュニケーションツール
皆さんのお子さんは、どんなときに絵を描きますか?
保育園や幼稚園では、雨の日の室内遊びとしてお絵描きをさせたり、塗り絵を与えたりします。
しかし、このように絵を描くことがある種の”イベント”になり、作品作りが”目的”となっていることを私は少し懸念しています。
歌を歌ったり、砂場で遊んだりするのと同じように、もっと日常的に行われるべきだと思います。
絵は生活の中で学んだことが自然に表現されるため、言葉では十分に伝えられない子供の想いを知るための非常に有効なコミュニケーションツールです。
パパ・ママは表現された絵に込められた想いを聴くように感じとり、子供の感情を知ることが重要です。
年齢別の子供のお絵描きの変化とコミュニケーションの取り方
子供によって個人差はありますが、子供の絵は年齢に応じて次のように変化していきます。
1歳頃は自我を全面に押し出し、腕の往復運動による半円の弧を描いたような線でなぐり描きをします。
腕を動かすことで線が現れることを楽しむような絵ですね。
2歳頃はことばを使い、描いた絵に「ママ」「パパ」と名前を付け始めます。
そして始点から終点まで一つの線で結ぶことができた○を描くようになります。
このあたりから、子供はなにか描きたいものをイメージしてから手を動かすことができるようになります。
3歳頃は、子供が何を描いたのか、どんな気持ちなのかをたくさん聴いてあげることでイメージが広がります。
「今日は動物園に行ったからその絵を描いてみよう」とテーマを絞ってあげることで、迷わず1つのことをイメージして描くようになります。
子供にせがまれてパパ・ママが上手な絵を描いてしまうことで、子供の自尊心を下げてしまうことがあるので、子供のレベルに合わせた絵を描くようにするなどを気をつけましょう。
4~5歳頃になると、絵の上を示す太陽をよく描くようになります。
○に見立てるだけでなく、△□などの図形も描くようになります。
また、仲間意識が芽生え、自分がどのように見られているかを意識しはじめるため、他人と比較されたり駄目出しをされてしまうと、描くことへの恐怖心や嫌悪感を抱いてしまう時期でもあります。
5歳以降の子供はパパ・ママからの「何を描こうか?」という声がけで自分なりのテーマを決められるので、自由に絵を描かせてあげましょう。 そのあとにしっかり絵について“傾聴”し、「どんな気持ちだったか」など想いを聴いたり、具体的に褒めたり、認めたりすることでコミュニケーションは図れます。
土井さんが講演会等で子供の年齢別の絵の変化について説明するときに使用している図
子供のお絵描きにどのように関わるとよいのか?
絵を描く子供に対して、パパ・ママはどのように触れあえばよいのでしょうか。
まずは大前提として、子供の自由な表現を否定しないことが大切です。それは個性を否定することに繋がります。
パパ・ママが子供の絵について面白がって“聴く”ことで、子供は絵が大好きになり、「もっと描きたい」と意欲的になります。
大好きな人に褒められることは何よりの心のごちそうです。
子供の考えを受容し、共感し具体的に褒めましょう。
「この描き方はとてもイメージが湧くね」、「楽しそうに描けているね」というように自分が感じた、“いいね”を伝えていきましょう。
日常生活でも絵を通しても「できた」成功体験を増やし、自己肯定感を高められるようなアプローチを続けていくことが大切ですね。
パパと子供のお絵描き遊び
いつものお絵描き遊びに一工夫加えたい!
お絵描き講座や親子のあそびの講師として活動している山口裕美子さんに、お絵描き遊びを面白くするアイデアを聞きました。
子供が成功体験を得られる3つのアート遊びをご紹介します。
どう描いた場合でも好き嫌いはあるものの、失敗はありません。
どれが一番上手いなどもありません。
どれも子供の自己肯定感を高められる遊び方なので、ご家族で取り入れてみてください。
※対象年齢は1~3歳前後
兄弟のいる子供では、自身の絵の上手さを比較してしまうことで苦手意識を持ってしまうこともあります。
上手い下手ではなく、感性を高めることを大事にしましょう。
【必要なもの】
- A3~4サイズの紙
- クレヨン
- ハサミとのり(なくても良い)
【遊び方】
- 1子供に自由になぐり書きをさせる。
- 2そのなぐり書きに対して、パパ・ママが線を足したり、円を加筆していく。
- 3円と円が重なり合っている箇所を中心に親子で好きな色を選んで一緒に色を塗る。
- 4子供に、3)で塗った場所にさらに色を足すように塗ってもらい、偶然生まれるクレヨンの混色を楽しむ。
色を足すことでどんな色ができるのか混色を楽しみましょう。
クレヨンは元々線を描くためにある画材ですが、それを混ぜることできれいな色を作り出すことができます。
ただのなぐり書きですが、この様に幅を広げるだけで色の魅力を感じることができます。
ぐちゃぐちゃ塗りで終わってしまうのではなく、きれいな形に切り取り、別の紙へ魚や様々な形にレイアウトをしながら貼り付けることで、また異なる楽しみ方ができます。
※対象年齢は3~4歳前後
【必要なもの】
- 綿棒
- ペットボトルの蓋を3個程度
- 絵の具または、水性ペン
- 画用紙
- 水
【遊び方】
- 1ペットボトルの蓋に絵の具を水で薄め3色程度用意
- 21)を綿棒に湿らせ、紙の片方に自由に点を描いてもらう。
- 32)を半分におることで両面に色が浮かび、様々な形を作らせる。
- 4その形が何に見えるかを自由に考えてもらい、場合によっては切り取る。
絵が苦手なお子さんでは、イメージが湧きにくいことが原因の場合があります。
そのようなときにうさぎを描く場合、パパがマルを描き、「ここに耳があったらウサギに見えるね」などと声掛けをして子供に描き足してもらうなど、対話を進めながらお絵描きをすると楽しく共作ができます。
また綿棒ではなく指でもできます。親子で想像力を高めながら表現をする時間を楽しみましょう。
※対象年齢は小学1、2年生頃
【必要なもの】
- 大きめのダンボール
- 色鉛筆
- クレヨンや絵の具など
【遊び方】
- 1大きめのダンボールを用意し、子供を仰向けに寝かせる。
- 21)パパが子供の外側をなぞりながら線を引き、型をとる。子供の手を広げたり、足の向きなどは自由です。
※ペンやクレヨンなどを使うと洋服などについてしまうため、色鉛筆のような薄いもので型をとってから、クレヨンや絵の具を使うと良いでしょう。 - 3子供は鏡で自分の顔や服装をみながら、クレヨンで自分の絵を描く。
このくらい大きなものに絵を描く機会はあまり多くはありません。
休日にベランダやお庭などでダイナミックにスキンシップをとりながらお絵描きをしてみてはいかがでしょうか?
子供とお絵描き遊びを楽しむときには、できあがった完成品も大事ですが、そのときの共に過ごした時間を大事にしてください。
上手にできたということよりも、子供が“パパと共に作ったことが楽しかった” と感じられることや、パパ・ママが “子供が美しいと感じた色や形はなんだろう”といった発見をすることに価値を置くようにしましょう。
親子で美術館を楽しもう
子供は絵を描くだけでなく、見て楽しむのも大好き。
絵を見るなら美術館ということで、東京都美術館の学芸員の稲庭彩和子さんに、親子で美術館を楽しむためのポイントを聞きました。
ミュージアムの世界に一歩踏み出そう
東京都美術館では、上野公園にある9つのミュージアムが連携する“ミュージアムスタート あいうえの”というラーニング・プロジェクトを推進しています。
年間を通じてファミリーで楽しめる参加型プログラムが行われています。
パパ・ママにとっては子供の学びをサポートするコツがわかったり、パパ・ママ自身が文化との出会いを楽しみ深めるきっかけにもなります。
コロナ禍の影響もあり、現在はオンラインの良さと実際にミュージアムを訪問することを融合させた形式のプログラムを行っています。
ワークショップを通して、アートの見方や考え方を学ぶことで、絵に興味を持つようになる子供が多いです。
美術館に子供を連れて行くということはハードルが高いと思う方も多いですが、始めにこのような体験型のプログラムに参加し、友達同士や親子で絵について知るきっかけをつくると良いと思います。
絵をよく“見る”ってどういうこと?
私達は普段何気なく、様々なものを“見て”いますが、実際はある対象を眼に映しても、多くの部分はぼんやりとしか認識されていません。
これは、眼に映るすべての対象をはっきり認識してしまうと、脳が情報を処理しきれないため、と言われています。
ですので、絵を見るときには単にぼんやりと「見る」のではなく、植物を観察するように「意識的に見る」必要があります。
美術館で大人がひとつの絵を見る時間は、なんと平均で1分程度であるといわれますが、子供達との鑑賞ワークショップは、ひとつの作品を15分以上かけて鑑賞をします。
同じ絵を何人かの人と一緒に「見て、考えて、言葉にして話して、お互いの意見を聞く」ことで、自分の気づきを深めたり、他の人の考えや意見を聞いて視野を広げることができます。
アートは答えがひとつではないので、多様性を大切にした活動を行うことができ、どの子供の意見も肯定的にグループの中で共有されるので、自己肯定感の醸成にもつながります。
例えば葛飾北斎の《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》を鑑賞していると、
「波が大きい」、「人が見える」、「波の形と富士山の形が似ている」という表面的な情報から、
「なんでこんな嵐なのに人がいるのだろう」「海の青が濃いから、この海は深いかもしれない」といった一つ思考の階層を深める答えも出てきます。
そのため、一つの絵を時間をかけて、様々な視点から発見をして、言葉にしていくことが大切です。
また、上野公園の博物館・美術館に展示されている様々な青いものを探し出すワークショップがありました。
見つけた青はどんな青なのか伝えてもらうと、「冷たい青」「深い青」など、青の色の細かい違いが見えてきます。
「洗練された青」について、子供がお母さんに「『洗練された』っていい意味?」と聞いていました。
お母さんは「『洗練された』はいい意味だけど、どんな青かなぁ」と言って、青の色を巡って親子で一緒に考えを巡らせていました。
このように、一つの対象物を多角的に言語化することで思考を深めることができるので、子供もパパ・ママも楽しくアタマを使うことができます。最近はお父さんと子供での参加が多くなっています。
お家でできる美術鑑賞とポイント
なかなか外出のしづらい状況でも、お家でアートを楽しむ方法は多くあります。
身近なものでいうと絵本です。子供は絵本を通して世界の様々な文化を知ることができ、視覚経験が広がっていきます。
また、「トイレ美術館」を作ってみるのもいいと思います。
市販の名画カードやポストカード、また展覧会にいったときにもらえるチラシや、新聞等に紹介されている作品などを子供と一緒に選んで、トイレの壁に張るだけです。
トイレは毎日使うので、ついついじっくりと作品を見てしまいます。
すると子供が「あの絵ってこういうこと?」「あの絵はなんで○○なの?」というように、興味をもってくれるので、おすすめです。
例)展覧会でもらえるジュニアガイド
東京都美術館で配布されている印刷物は下記からダウンロードすることが可能です。
https://www.tobikan.jp/learn/resoucebox.html
都立の文化施設一覧はこちら。
https://www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp/bunka/bunka_shisetsu/0000000239.html
※美術館に行く際や、各種プログラムに参加される場合は、各施設のHP等で新型コロナウイルス感染症感染防止対策の取組についてご確認をお願いします。